November 29, 2012

痴話

某保険会社にて。

え、それ、マジで言ったんですか?
本人に対して?
皆の前で?

信じられない、嘘じゃないですよね?

Levels - "LE7ELS" Avicii

なんと言ったらいいか、まあ、その場にいた訳じゃないから何ともね。

アルコールが入ってたとか。
違うんですか、入ってなかったんですか。
そうですか。

いや、全く気がつかなかったなあ。
鈍いって、そんなことに鋭くたって一円にもならないじゃないですか。
わざわざ敏感にならなきゃならいなんて、御免です。

ええ、確かに言われてみれば、そう思ったこともありましたけど。
だけどね、そう思ったからって、すぐに口に出す馬鹿はいないでしょう。
鼻毛が出てるってことさえ相手には言いにくいもんですからね、それと同じですよ。

ところで鼻毛、出てませんよね?

Sweet Nothing - "18 Months" Calvin Harris

都知事選候補者のインタビューにて。

ある候補者が、仕えてきた相手の多くが「変人」と呼ばれた理由について、「ブレないからだ」と回答していた。
ブレないことは、初志貫徹の頑強な精神力とも書けるし、柔軟さに欠けた思考停止状態とも書ける。
読み手に判断を委ねるという意味では、賢い回答だろう。

バランス感覚のある人というのは、評価を受けにくい。
それこそ言葉遊びに過ぎないのだが、単なる優秀不断と受け止められやすい。
勝ちか負けか、敵か味方か、一方に断じてしまう方が手間は掛からない。

バランスを崩した方が、理解されやすいことがある。

ゼメキスがなかなか評価されないのは、バランス感覚があるからだと思う。
それを「軽い」エンターテインメントに仕上げるものだから、不遜だというような意見も出る。
常に商業監督であることに徹する姿勢は、「重い」問題を回避するための保険に見えなくもない。

英雄か、犯罪者か。
的確な判断か、狂気の暴走か。
不時着を成功させた機長の運命は、検出されたアルコールで大きく変化する。

トレーラーとはいえ、ストーンズのギミー・シェルターを持ってくるあたりが流石だ。

"Flight" Robert Zemeckis 
人は、人の話を簡単に信じる。

November 26, 2012

深秋

もう11月も終わり。

何も進んでないのに、時間が過ぎる早さばかり感じる。
でも、不思議なことに、もどかしさは感じない。
そこが一番の問題なんだろうけど。

Raindrops Keep Fallin' on My Head - "Raindrops Keep Fallin' on My Head" B. J. Thomas

November 18, 2012

演出


一日中、雨。

正確には「東京は、雨」じゃなくて「千葉は、雨」。
同じ関東圏でも、こちらは季節が一足早いような気がする。
カーテンを開けても部屋の中が暗いし、昼間でも寒い。

家の前が幹線道路の抜け道になっているので、結構な数の車が通る。
窓から外を見なくても、車の走行音で路面が濡れているかどうかが解る。
人が歩いてる姿は、ほとんど、まず、これっぽっちも、見かけない。

狭い道なのに、車が物凄いスピードで走り抜けていく。


"Vampire's Kiss" Robert Bierman

サイドベンツのジャケットは、最近では滅多に見かけない。

タクシーの運転手をしている時、制服のジャケットがサイドベンツだった。
一着目は会社が支給してくれて、二着目からは自前で購入するように、とのお達しだった。
勤務体制からいって二着目の必要は感じなかったが、購入しようとすると大変なことも知った。

今、普通の店にサイドベンツは置いてない。
置いてある店は、老舗の仕立屋になってしまう。
乗馬の際に着崩れないように、という工夫からサイドベンツが考案されたのだそうだ。

昔は一般のサラリーマンもよく着ていて、親父の箪笥に吊ってある数着もサイドベンツだった。

演出では、主役以上に脇役が重要になる。

レジの女の子、シーラ役はデディー・ファイファーが演じている。
カラオケで同じようなバイトをしていた頃に観たからなのか、シーラの演出にえらく感心したことを覚えている。
いるよね、こういう女の子。

フォスター、店長、お客たち、状況として彼らには誰でも目がいく。
誰もが見るわけではないが、その彼らを取り巻く世界感を作り上げているのが脇役だ。
脇役の演出によって、深刻なのか、不条理なのか、能天気なのか、といった作品の味付けが決まる。

深刻だから深刻に、それでは深刻にならないのだ。

"Falling Down" Joel Schumacher

November 17, 2012

来日

そうか、来日してるのか。

聴きに行ける人が羨ましい。
誰か連れてって。
いや、誰かを誘えるようにならないと、駄目なのか。

Don't know why - "Come Away With Me" Norah Jones

残念だが、このままでは来日する可能性はないだろう。

いいと思うんだが。
エレクトロニカというジャンルは、この国では異様な程に誤解を招きやすい。
キャリアがある分、もっと知られてもいいと思う。

Much Too Much - "You Once Told Me" Andain

来日以前の結果になってしまったことは、とても悲しい。

ビリー・ホリデイの再来と讃えられる人は多いが、越えるかもしれないと期待される人は少ない。
同時に、滅茶苦茶な言動が極東のラジオでも伝えられる程だった。
人気の衰えない反面、まともな音源、いや、まともな精神状態で収録された音源は少ない。

Rehab - "Back To BLack" Amy Winehouse

November 15, 2012

遠雷

遠雷が聞こえる。

今、洗濯物を干したばかりなんだけど。
ベランダから部屋に入ると、ラジオから、スペインでデモが暴徒化しているとのニュース。
スペインの失業率は、若年層で50%以上に達するらしい。

確か昨日か一昨日、ハプスブルク家がダイヤをオークションに出した、というニュースが流れていた。
読み直してみると、売却価格は日本円で約17億、もともともはアウグスト大公の所有だったらしい。
あのあたりの家系は異様に複雑だから、また暫くの間、所有者は非公開になるのだろう。

名のあるダイヤは持ち主を選ぶ、そうだ。

God Bless the Child & Now Baby or Never - Billie Holiday, Mv : Count Basie's Band LIVE
Archduke Joseph Diamond - Christie's Auction, Geneva AFP

派遣会社とのやりとりは全てメールで、給与内容もメールで知らせてくる。

某保険会社へ派遣される際、服装は「オフィス・カジュアルで、ジーンズとスニーカーは不可」との指定だった。
はっきりスーツと書かないのは何故ですか、とメールで問い合わせようと思ったが、やめた。
初日はネクタイを締め、スーツで出勤した。

案の定、皆がスーツだった。
まあ、崩した方が楽なのは違いない。
次第に、オフィス・カジュアルになっていった。

何故かノータイにはボタンダウン、という常識がある。

Electro Swing - "Caravan Palace" Wagram Music, France

常識は恐ろしい。

日の沈まぬ国、と歴史上で最初に謳われた国はスペイン帝国だ。
つまり、ハプスブルク朝だ。
アメリカ大陸まで植民地化していたが、末は、カトリックの高潔さに固執しながら荒んでいく。

これがダイヤの呪いなのかどうなのかは、知らない。

ボタンダウン以外でノータイになると、不思議なくらい無礼講の酔っ払いにしか見えない。
いちいち面倒だが、その結果、目立ってしまうのも御免だ。
そう思って、ボタンダウンを買って、洗濯したのに。

遠雷が聞こえる。

One Day - Type with one finger

November 13, 2012

冗談

11月は、アンラッキーな月だ。
その他にアンラッキーな月は、7月、1月、9月、4月、10月、5月、3月、6月、12月、8月、2月。
マーク・トウェインの言うとおりだな。

Joker - "Batman : The Killing Joke" Alan Moore & Brian Bolland

世の中、金がものを言うらしい。
それなら、俺には補聴器が必要だ。
ああ、聞く耳はもってないがな。

Joker's Joker Card - "Batman : The Dark Knight" Christopher Nolan

このパラシュートは安全だよ。
今迄、故障してるってクレームを言ってきた奴は一人もいないから。
さあ、安心して飛んでくれ。

July 21, 2012 - "The Star-Ledger" New Jersey Newspaper

英語版ウィキペディアのページはどうかしてる。
元々コミックのキャラクターだから、コミカルなくらいにどうかしてるんだろうか。
この事件はショックだった反面、いつか誰かがという予感もあって、嫌になった。


ジョーカーは、ジョークにならないキャラクターになってしまった。
この事件で、新作を観る気は失せた。
未だに観る気がしない。

きっと名作なんだろう。

November 11, 2012

贅沢

昔々、音楽には制限時間というものがなかった。

必要な時に始まり、必要な時に終わった。
王様が寝室から執務室へ移動する際の小曲、司祭が昼夜をかけて祈る際の大曲、といった具合。
状況次第の生演奏で、状況は常に変化するから、演奏時間も常に変化していた。

現代に繋がる音楽で、大きく影響している最初のメディアはSP盤だろう。
1940年代の話なので、ラジオのプログラムも大きく影響している。
音楽は、SPの最大収録時間である約4分30秒に納まるように作曲されるようになった。

当時のヒット曲は今でもオールディーズとしてあちこちで耳にするが、2分~3分程度の曲が多い。
プレスリー初期の Heartbreak Hotel など、オリジナルはたったの2分8秒しかない。
恐らく、あれだけのスローテンポで大ヒットを記録する短い曲というのは、もう登場しないのではないか。

そして、大量消費社会が到来する。

The Twist - "Twistin' round the world" Chubby Checker

LP盤の普及は1950年代の後半以降である。

最大収録時間は片面で約30分、最初から両面収録の規格だったので、合計で約60分となった。
これに、ロック史上の当たり年と呼ばれる1962年以降が重なる。
リバプール・サウンド、ブリティッシュ・インべージョンのムーブメントについては説明の必要がない。

言葉通り、もはや戦後ではなく、生活の中で音楽を楽しむための余力ができるようになった。
同時に、マーケットも一部のパトロンではなく、購買力を持ち始めた一般の若年層に左右されるようになった。
この辺りから、一曲あたりの時間が4分から5分程度に伸び、「アルバム」という考え方が誕生する。

アルバムでは、ミュージシャンの世界感が選曲や曲順などの構成で表現される。
ヒット曲でなくとも、アルバムに組み込むことで相互に補完しながら意味を持つような曲も出てくるようになった。
構成だけでなく、編曲も含めた「バージョン」という考え方が一般に認識されるのもこの頃からだろう。

試行錯誤のほとんどは、1970年代までに出尽くしている。

Bee Gees - 1977 Billboard Awards, NBC Television

1980年代の中頃、LPの販売枚数をCDが追い抜くようになる。

CDは片面収録のみの規格で、最大収録時間が約74分。
当初はアナログのLP音源をそのままデジタル変換してCDにしたものが大半だった。
その為、LPのアルバムではA面からB面へ裏返していた、物理的にも構成的にも区切られた部分が消滅する。

関係者の回顧録などを読むと、この区切りの消滅には相当戸惑ったらしい。
A面とB面という区切りを、マイナスではなくプラスと考える傾向もあったのだ。
後々、ヒット曲の並ぶA面よりも、実験的な構成のB面が評価される、といったことも少なくなかった。

演じ手にとっても聴き手にとっても、特に、ポピュラー・ミュージックで連続74分は長丁場なのではないか。
そう戸惑う関係者がいる一方で、この長い収録時間を歓迎するクラシック音楽以外の関係者もいた。
背景には、MTVの開局とビデオデッキの普及があった。

マイケルの Thriller は、1982年にリリースされたアルバム「スリラー」から1984年にカットされている。
実は先に、ビリー・ジーンやビート・イットがカットされており、最後の最後にカットされた7番目のシングルだった。
先行した6曲で売れると見込まれて、スリラーをカットする際には前例のない金額の予算が投入された。

スリラーはカットされたシングルと共に、ミュージックビデオ(以下MV)が大ヒットする。
シングルとしては約6分の曲なのだが、MVはオリジナルで約14分もあるので埋めるようにアレンジされた。
予算の大部分はMVに費やされており、それでも充分な利益が回収できることを証明した最初のヒット曲だろう。

ピンからキリまで、ミュージシャンがアーティストと名乗るようになった。

Thriller - "Thriller" Michael Jackson

1990年代以降というのは、まだ生々しすぎる。

アルバムに収める曲、MVとしてテレビで流す曲、ラジオで流す曲、宣伝用に短くアレンジした曲。
同じ曲でも編曲が異なり、その違いそのものも楽しむ「リミックス」という考え方が当たり前になった。
1990年代というのは、今迄のアルバムという概念が崩壊する、最初期の頃であったと思う。

同時に、誰もが聴いたことのある曲、皆が時代感覚を共有できるようなヒット曲が、極端に減っていく。
国内の紅白歌合戦でも、選曲に苦悩していることが報じられるようになったのはこの頃からではないか。
2000年代に入ってからは、ご存じの通りだ。

YouTube に代表される動画サイトの影響は大きい。
最早、スピーカーの前にじっと座り、曲順に従って小一時間も聴き込むという人は絶滅危惧種だ。
アルバムという感覚は、一般の聴き手からはほとんど消滅してしまったのではないだろうか。

一曲あたりの時間感覚はまだ1990年代を引き摺っており、短くて5分から6分、長くて7分から8分か。
それよりも、2010年代に入って急激に増えたのが「フィーチャー」で、カップリングを強調する曲。
明らかにキーワード検索への対策にフィーチャーしているだけの曲が、あるような、ないような。

音楽に理屈はいらない、決まりごとなんてない。
でも、少しだけこんな風に思うこともある。
音楽は、豊かになったのか、貧しくなったのか、どちらなのか。

豊かになったのだ、と思いたい。
царя Николая и ​​его семьи - "Russian Ark" Alexander Sokurov

November 10, 2012

待機

ガムテープが5本、達磨落しみたいに積まれていた。

その5本を前にして、2人の正社員が怒鳴りあっている。
一方は「これだけの人数の机に対して5本しか頼まないのは認識不足だぞ」と主張。
もう一方は「使用目的や発注本数に関する具体的な指示はなかったぞ」と主張。

怒鳴りあいの周辺にいる連中はシーンと黙ってモニターに向かい、背中で2人の様子を見守っている。
その更に周辺にいる連中はモニターの間からコッソリと窺って、ヒソヒソ囁いている。
いい加減、誰か止めに入ったらどうだ、とか、上司を呼んで来い、といった声が聞こえはじめた。

某保険会社で入力のみ担当する部署のフロア。
このフロアだけで、数百名の派遣社員が数社から掻き集められている。
入力の元となる申込書類が相変わらず届かないので、派遣社員は昼寝同然の待機状態だ。

Stamina - "Rave Age" Vitalic

先日から、この保険会社は仕事のない数百名の派遣社員に対して賃金を支払っている。
賃金1人1日1万円として、毎日の昼寝代に数百万円が消えているようなものだ。
なんでもいいから、とにかく仕事をさせろ、ということになった。

まず、机と机の間にある隙間をガムテープで目張りせよ、という「重要」な業務命令が下された。
派遣社員の数百名は、10名を1単位のチームとして、5名2列の向きあいで机を並べている。
この並べた机の隙間に、申込書類がストンと落ちてしまうことがあるのだ。

謄本や証明書の原本が入っていたりするので、紛失は御法度。
それでも、なくなる時はなくなり、大切な書類に限って何故か行方不明になってしまう。
今日中に全ての机の目張りをするはずだったのに、先程のガムテープが5本になってしまったわけだ。

「でも、数名分の仕事に対して数百名の派遣社員が問題にならないのに」と、向かいの席の50代の女性。
続けて「5本のガムテープであれだけ本気で怒鳴りあえるって、凄い会社だよね」と呟いた。
その隣の席で「駄目ですよ、聞こえちゃいますよ」と笑いを堪え切れない20代の女性。

「Type with one finger さん、ガムテープ1本、先に取ってきちゃってよ」と隣の同世代の女性。
「よし、じゃ、いっちょ取ってくるか」と、席から立ち上がる仕草をしてみせるだけの自分。
「あの怒鳴りあいの前で、ホントに1本取ってきたらタバコを奢ろうじゃないか」と隣の60代の男性。

タバコですか、いいですね、何箱ですか。
3箱でどうだいと言われ、更に隣の同世代の女性が今週の休憩時間は毎回コーヒー1杯を奢ると言ってきた。
よし、約束ですよ。

ネクタイを締め直して、席から立ち上がった。

Open Happiness - Coca Cola, Ad : McCann Germany

席から立ち上がり、怒鳴りあってる正社員2人の方へ歩いていく。
目の前まで歩くと、邪魔にならないように腰を屈めて横切り、側のドアから部屋を出た。
トイレに行きたかっただけで、もともとガムテープを取るつもりなんて、あるわけない。

小便をしていると、先程の60代の男性が隣に立った。
ま、そういうオチだとろうと思ったよ、と笑いながらの連れ小便。
どうやら本当に埒があかないらしく、派遣社員の全員に休憩の指示が出たと教えてくれた。

休憩室の食堂に向かうと、先に来た女性陣が席を取ってくれていた。
座りながら、再びトイレのオチについて突っ込まれる。
あの状況でガムテープを取れる奴がいたら、多分それって大物か狂人ですよ。

まあそうですよねえ、と20代の女性。
この時間に休憩っていうことは、休憩が終わったら続けて昼休みになっちまうぞ、と60代の男性。
待機だけってのも疲れるんだよな、と皆が溜息。

ハクナ・マタタ、でいきましょう。
これでいいんだってことでしょ、と同世代の女性。
ケ・セラ・セラなら知ってる、と50代の女性。

飢えたライオンと諦めた派遣社員、社会のジャングルにて。

Fatty Boom Boom - "Ten$ion" Die Antwoord

November 9, 2012

改装

テンプレートをカスタマイズしてみる。

なんでも出来るということは、自分で決めなければならない。
自分で決めようとして、なんにも出来ないことを知る。
面倒になって、兎に角、どんどん引いてみる。

いろいろ理由があって Chrome から入って組んでる。
こんな基本的なことが、なんで Explorer とズレるのよ。
よく解らん。

それから、あれもいらん、これもいらん。
なになに、ここから先はHTMLでお願いします、だと。
バカらしくなってきた。
One Day - Type with one finger
タバコを切らしてしまった。
タバコを売ってる店は近所にない。
というより、近所っていう言葉の距離感覚が、ちょっと違うんだよね。

この辺りはなにかしら行動しようとすると、なんでもかんでも距離がある。
車もないし、自転車はお袋が買い物に乗っていってしまった。
でも、タバコはない。

緩んだ靴紐みたいな、人生。

November 6, 2012

予告

続きはネットで!と謳って終わるCMがある。

今迄、この手の続きをネットで見たことはほとんどない。
どの程度の効果があるのかは知らないが、そういうCMが多いということは、効果があるのだろう。
CMの制作会社にしても、入口のクリック数さえ増えてくれれば、その先の中身までは責任がない。

大抵、映画の予告編は助監督に任される。
映画を映画館でしか観賞できなかった時代、予告編は大切な宣伝だったことが想像できる。
助監督は数十秒間で、中身を伝え、観たいと思わせ、作品を覚えさせる工夫をする。

これはマニアの領分になるが、予告編には本編でカットされたシーンが入っていることもある。
本編の完成を待ってから予告編を作ったのでは宣伝に間に合わないから、これは仕方がない。
予告編は、核心さえ突いていれば、本編との誤差は不問になる。

ブラックスプロイテーションを象徴する「コフィー」のポスターも、そういう誤差の好例のひとつだ。
堂々とショットガンを構えるパム・グリアは、アフロヘアと共に未だにイメージが引用されている。
しかし、あの赤いブラに黄色いカンフーパンツという姿では、本編に一度も登場しない。


007の新作「スカイフォール」の予告編が一般に公開された。
問診を受けるボンドの痩せこけた表情に、これは意外に面白いかもしれない、と思った。
それが半年くらい前の話である。

最近の映画は、特に大作は、予告編が何度も公開される。
時間の長短や編集の違いなど、いくつものバージョンが公開される。
では、その映画を今迄以上に観たくなったかというと、そんなことに全くならない。

特に、一般の観客として感想を述べると、ここ15年間程の007は失作続きと言っていい。
いろいろ書きたいことはあるが、とにかく本編が面白くなければどうしようもない。
結果的に、毎回の如く、裏切られた印象しか残らない。

クレイグ以降のキャスティングやリアリズムへのシフトなど、頑張ってるな、とは思う。
それでも、ミス・マネーペニーと冗談をやりとりしていた頃のボンドには勝てない。
キャラクターもアクションも、冗談みたいな設定なのに。

最新最長の予告編を観た。
全篇IMAXだとかアクションだとかは、本当にもうどうでもいいんだよ。
今度こそ、42歳の中年親父でも惚れてしまうようなボンドを見せてくれ。
 
Domino, Paula, Fiona, and Bond - "Thunderball" Terence Young
しかし、問題はバルデムだ。
どう考えても扱いきれるとは思えない、というか、予告編で既に破綻してるような気がする。
シガーを恐れぬとは、本当に恐れ入る度胸だ。


今頃、あの世でフレミングも賭けてるに違いない。