February 13, 2014

深遠

あなたの目の前に2つの部屋がある。

どちらもドアは閉まっていて中の様子は伺えない。
片方の部屋には人間がいて、片方の部屋にはロボットがいるが、それは見えないから解らない。
どちらのドアにも小さな郵便ポストがついており、あなたはそこから手紙でやりとりができる。

あなたは「1+1=?」と書いた手紙を両方の郵便ポストへ入れた。

どちらからも直ぐに返事が帰ってきて、どちらの手紙にも「2」と書いてある。
あなたは、どちらが人間でどちらがロボットなのか見分けることができなかった。
そこで、もう少し見分けやすい方法をあなたは考えた。

あなたは自分のお気に入りの小説と、「感想は?」と書いた手紙を両方の郵便ポストへ入れる。

しばらくして、どちらからも返事が返ってきた。
片方の手紙には「面白いですね、素晴らしい」といった内容が綴ってある。
片方の手紙には「くだらない、時間の無駄ですね」といった内容が綴ってある。

あなたは、人間とロボットを見分けなければならない。

"Magdalen with the Smoking Flame" Georges de La Tour, France c.1640
Los Angeles County Museum of Art

チューリング・テストやフィロソフィカル・ゾンビなど、いろいろ見聞きしても今一納得しがたい。

こういった話でよく引用される一人に、ワイルダー・ペンフィールドという脳医学者がいる。
彼は、現在では許されない実験の途上で、自宅の庭石に「脳(の絵)=心(ギリシャ語だったと記憶する)」と刻む。
脳の研究を進めることは、そのまま心について解明することになる、という意味だった。

晩年、彼は「脳=心」のイコール部分に、自らX印を刻んでいる。