July 23, 2013

雷鳴

雷の仕組みは、科学的に解明されている。

本やネットで調べて読めば、なるほどと思う。
積乱雲の中の状態も、水の分子も、静電気も、この目で見たことは一度もない。
それでも、本のページを閉じて、パソコンの電源を切る。

疑っていたら、日常は過ごせない。

"After a rain, Lake ladoga" Arkhip Ivanovich Kuindzhi, Russia 1873

雷の仕組みは、科学的に解明されている。

July 22, 2013

月狼

シートン動物記の中で、「狼王ロボ」は孤高の章だ。

1890年代の末期。
アメリカの牧場主から懇願され、イギリスの博物学者アーネスト・T・シートンはニューメキシコへ赴く。
そこから、ロボと呼ばれた狼との信じられないような闘いの日々が始まる。

悪魔が知恵を授けたとまで囁かれ、怖れられている野生の狼だ。

しかし、シートンはとうとうロボの唯一の弱点を掴む。
ある白い毛並みの狼と行動を共にする時にだけ、彼の動きがいつもと異なることに気が付いたのだ。
スペイン語の形容詞で「白い」を意味するブランコに因み、白い毛並みの狼は女性名詞でブランカと名付けられた。

ロボが月に吠えた夜。

ブランカを囮にした最後の罠に、ロボは落ちた。
その時、既に彼女が殺されていることを、彼は悟っていたと思う。
ロボは息を引き取る瞬間まで人の手を拒み続け、ブランカの後を追った。

人の知恵と卑劣さに、シートンは己を恥じた。

&
&
Moonlight - "Beethoven : Sonaten" Daniel Barenboim

その者は狼のようなものである。
その者は狼である。
故に、追放された者である。

                「人狼」 沖浦啓之

July 18, 2013

恋人

え?

うーん、だって10歳の時だよ。
ピンクレディのUFOを皆で真似て「ユッホ!」とかってフザけてた頃だもん。
歌詞の意味なんて解るわけないよ。

なんでこのレコードをくれたのかなあ。
理由なんて聞かなかったよ、叔父さんがいらないって言うから、もらっただけ。
離婚した叔父さんの引越しに婆ちゃんが手伝いに行って、一緒についてったら、くれたんだよ。

歌謡曲を、ちゃんとしたレコードとちゃんとしたステレオで聴いた、初めての曲なんだよね。
童謡のレコードなんかはあったけど、他は親の持ってたクラッシック音楽ばっかりだったからさ。
家に帰って聴いた第一印象は馬鹿なんだけど、なにこれ暗っ!

ただね、歌手の声っていうのは凄いもんなんだなあ、と素直に思った。
それはスピーカーを通しても感じたよ、どんなに真似しても真似できない格というか。
サビはもちろんだけど、出だしがね、聴くと簡単だけど、もう出だしから難しいんだよ。

今回、動画を探しながらいくつか聴いたんだけどさ。
やっぱりレコードに収録した時期の声が、段違いによくてビックリした。
特に後半の「恋人よ、さようなら」から先の歌い回しは、いい意味で、若さ故に成し得たんだと思う。

素直に聴けるようになったのは三十代になってくらいじゃないかなあ。
中学頃からしばらくの間、言葉が嫌いで嫌いでしょうがなかったから。
歌詞が、という意味じゃなくて。

言葉そのものが嫌いだったんだよ。
言葉って、解ったと思うと、またその奥や周辺に何かがあるような気がしてさ。
きりがなくて、深く立ち入るのが怖かったんだろうね。

うん、これ木田高介のことだよ。
そういう風聞も全部ひっくるめて、歌謡曲っていうのは歌詞が、ひとつひとつの言葉が、もう、ね。
最近、もしかしたらテクノっていうのは、あの頃の逃げだったのかもって思うことがあるもの。

すごく好きなんだけど、やっぱり書こうとすると、重くなるね。

Koibito yo - "Koibito yo" Itsuwa Mayumi

好きなんだけど、重いんだよ。

July 14, 2013

煙草

ローリー(ウォルター・ローリー)卿がイングランドに煙草というものを紹介したんだ。

女王の寵臣で、彼も親しみを込めてクイーン・ベッシー(エリザベス1世)と呼んでいた。
彼のおかけで、あっという間に煙草を吸うことが宮廷で流行したんだ。

卿と女王も仲良く一服しただろう。
すると彼は彼女に、煙草の煙の重さを計れる、と言ったんだ。

客A 「煙の重さ?」

そう、煙の重さだ。

客B 「そんなのできる訳ないだろ、空気みたいなもんだぜ?」

まあ、魂の重さを計れると言ったようなものなんだが、なにしろ頭のいい男だ。

まず、彼は新しい1本の煙草を秤の皿に乗せて重さを計った。
次に、その煙草に火をつけて吸い、灰を全て秤に落した。
吸い終わると、吸いがらも秤に乗せた。
灰と吸いがらの重さを、新しい1本の重さから差し引く。

その違いが、煙の重さだ。

"Self-portrait with Cigarette" Edvard Munch 1895
 The National Museum of Art, Architecture and Design, 
Kingdom of Norway

先日、直帰扱いで千葉の労働局へ行った。

関係書類を提出して、簡単な打ち合わせをするだけ。
退勤時刻よりもかなり早い時間だが、その日の仕事はそれで終わった。
ビルを出て、さて、自由になった時間をどう過ごそうかと辺りを見渡す。

すると、今時、珍しいじゃないか。
ほんの少し歩いた先にシガー・ショップがある。
煙草の専門店なんて、本当に久しぶりだ。

かなり前に話題になった手巻きの「Che」が店頭に置いてある。
最近、一般の紙巻きとしても売られるようになった煙草のオリジナルだ。
手巻きも紙巻きも、パッケージにチェ・ゲバラがデザインされている。

勝手に南米産だろうと思い込んでいたが、今回初めてルクセンブルク産だというのを知った。
ルクセンブルク大公のマリア・テレサ妃がキューバのハバナ出身だから、という縁らしい。
ある意味、由緒正しき大航海時代からの流通経路を辿る煙草だ。

しかし、今や紙巻きとはいえコンビニで買える煙草だ。
それなら、紙巻きでもなかなか売ってないダビドフのマグナムでも買った方がいい。
一箱に千円以上も払えないけどね。

さて、何を買おう。

Vessel - "Conatus" Zola Jesus
結局、いつもの。

July 11, 2013

拝聴

ここ数年、まとめて寝ることができない。

数時間くらい寝ると、自然に目が覚める。
別に苦ではなく、起きるとトイレに行ったり一服したりして適当に30分くらいを過ごす。
また寝る、を繰り返す。

夜働いて、昼寝ている。

そして、起きるタイミングが夕方頃になる時がある。
自宅前は幹線道路への抜け道になっているが、その時間帯にあるバイクが通過する。
このバイクを運転しているのは男性で、恐らく50cc程度のスクーターだと思う。

一度も見たことはないが、バイクの主が男性だと書くのには理由がある。

&
Civilian - "Civilian" Wye Oak

どんな騒音の中でも寝ることができる、というのが自慢なので、そのバイクを煩いとは感じない。

ただ、田舎の日射しは強烈だから、寝るときは流石に雨戸かカーテンを閉める。
起きて一服する場所は台所の換気扇前で、台所や廊下の窓は曇りガラスだ。
従って、見ようと思って窓を開けたり、玄関から出たりしないかぎり、外の様子は見えない。

来た来た、見えないけれど音で解る、今日も来たぞ。

ビイイイッという軽い排気音なので、50cc程度のスクーターというのは間違いないと思う。
そして、運転しているのは男性で、恐らく10代後半から20代くらい。
なんでそんなことが解るのかというと、いつも歌声が聞こえるからだ。

これがもう、発声練習かと思うくらいの声量で歌いながら、ビイイイッと走り去っていくのだ。

Longtime - "Trouble's Door" Ash Grunwald

千葉で生活するようになって目下最大の謎は、そのバイクの主が「何を歌っているか」だ。

彼は運転中、季節や天候に関係なく、ずっと歌っているようなのだ。
遠くから来て、自宅前を通過、遠くへ去るまで、歌は途切れない。
いつも日本語の歌詞で、これは窓や雨戸を閉めていてもハッキリ聞き取ることが出来る。

しかし残念かな、彼は音痴なのだ。

無茶苦茶な音痴なのだ。
書き殴った文章、という言い回しに倣えば、まるで歌い殴るかのような音痴なのだ。
故に、日本語であることは明確なのに、歌詞やメロディーは判然としない。

もちろん、最初から最後まで聞いたことは一度もない。
元気で明るいメロディーなのは毎回同じだが、選ぶ曲は毎回違うようだ。
いつも、あれだけ人目を気にせずに突き抜けて歌える人って、どんな人なんだろう、と思いながら聴いている。

まるで探偵ナイトスクープの小枝探偵が依頼されそうな話だが、何を歌っているかは本当に謎だ。

X - "Lost Where I Belong" Andreya Triana

もしかしたら、オリジナル・ソングなのかもしれない。

July 8, 2013

冷汗

ホーネッカーが朝になって起きたんです。

昇ってきた太陽に、窓から「おはよう」って挨拶した。
太陽も「おはよう」。

昼になって「こんにちは、太陽」。
太陽も「こんにちは、ホーネッカー」。

夕暮れになって「こんばんは、太陽」。
太陽は「このバカタレ、俺は西側にいるんだぜ?」。

どうです?

秘密警察A 「クックック、確かに面白いな、あっはっは」。
秘密警察B 「・・・・・・」。

壁に耳あり障子に目あり。

"Das Leben der Anderen" Florian Henckel von Donnersmarck

ここ以外なら今すぐに、どこでも好きな所に行ってくれ、太陽。

疑念

日常的に洋楽を聴いていて、違和感を感じることがある。

それは、ミュージシャンが政治や宗教について明言することだ。
政治なんて信用できない、神様なんて嘘っぱちだ、という話ではない。
有名なミュージシャンほど公の場で、支持する政党や信仰する宗教について明言する。

全部が全部ではないが、特にアメリカでこの傾向が強い。
ヨーロッパのミュージシャンも、アメリカで活躍している場合は大抵何かしらを明言している。
仮に、支持する政党がなく、信仰する神様がなかった場合、アナキストか変人の扱いだ。

若い国だから仕方がないのかな、とは思う。
どこに所属してもいいという自由は重要なのだが、どこにも所属しなくていいという自由には価値がない。
それは、お互いに所属先と、その中での仲間意識を確認しないと不安だから、ということか。

音楽関係はほぼ民主党寄りで、業界や組合もそれに倣った動きを見せる。

Reagan - "R.A.P. Music" Killer Mike

映画「エクソシスト」は、歴史に残るホラーの傑作とされている。

もちろん、公開当時の特殊効果としては衝撃的な映像であったことは理解できる。
しかし、そういうテクニカルな映像というのは、時代が過ぎればどうしても貧相に見えてしまう。
ところが、エクソシストは未だに怖い映画の筆頭として捉えられている。

つまり、怖さのポイントは映像ではないのだ。

当たり前だが、何を怖く感じるかは、社会や文化、育ってきた環境などが大きく影響する。
一番多くの観客が失神したのはアメリカで、これは宣伝文句でも積極的に謳われていた。
しかし実際に観賞してみて、もちろん怖いことは怖いが、身の回りで失神してしまったという話は聞かない。

何が怖いのか。
カラス神父は、メリン神父と共に悪魔祓いに挑み、神を疑うようになる。
これがもう、身震いするほど怖いポイント、らしいのだ。

例えば、もうひとつのホラーの傑作、映画「シャイニング」は公開後、あらゆる点が様々に模倣されてきた。
しかし、エクソシストでは、映像は模倣されたが、核心部分だけはほとんど模倣されたことがない。
そのくらい、信じるモノを疑うというのは禁忌のテーマなのか。

続編ですら、それには触れていないのだから。

Tubular Bells - "The Exorcist" William Friedkin

正月は神社、お盆は寺、クリスマスは教会、投票日は忘れてました、という感覚では何れも理解し難い。

July 2, 2013

空耳

雰囲気、という漢字を普段どう発音していますか。

正確な読みは「ふんいき」です。
でも、実際の会話では「ふいんき」と発音していることが多いように思いませんか。
この違いが問題になることはないし、意味が通じないこともありません。

小林克也さんの先生は、ラジオだったそうです。
中波のFEN(現AFN)や短波のVOAを徹底的に聞き込んで、真似て発音する。
これを何度も繰り返してあのレベルに達したというのだから、凄いと思います。

LとRの違いも聞き取れてるんでしょうね。

Anderson Cooper 360° - CNN

英語の「Yellow」を日本語の片仮名で書くと「イエロー」です。

でも、「いえろー」と発音しても、通じない。
目の前で黄色い何かを指差して言えば通じるかもしれないけれど、電話などになると、通じない。
英語の発音記号を確認したり、恥ずかしくも巻き舌で言ってみたりするんですが、通じない。

ジョン万次郎さんは自作の単語帳に「ヤロ」と書いたらしいですが、凄いと思います。

&
Stronger - "Graduation" Kanye West

「頑張れ」が「がそばれ」なのは、お愛嬌です。

漢字 (Japanese character, Kanji)  頑張れ … Go for it, Hang in there, You can do it!
平仮名 (Japanese syllabary, Hiragana)  がんばれ … ditto
片仮名 (Japanese syllabary, Katakana)  ガンバレ … ditto
ローマ字 (Romanization of Japanese)  Ga n ba re … ditto

○  Ga n ba re  ガバレ  がばれ  → 頑張れ

×  Ga so ba re  ガバレ  がばれ  → Doesn't exist in Japanese words.

In this music video, I looked like ソ (so).

ン (n) and ソ (so) are similar in Katakana. 
But pronunciation is different.
However, a young generation's Japanese may mix as intentional joke.

やっぱり難しいですね。