July 30, 2015

熱夜

こんばんは。

さて、オリンピックの話題、次から次へといろいろあってまあ、凄いですね。
数年前なんですけど、タクシーの運転手をちょっとだけやりまして、ええ、都内です。
その時はちょうどオリンピックの招致合戦の最中だったのかな。

各国語で案内が書いてある指差しパンフレットとかね、お上から配布されたの覚えてますよ。

都内でタクシーやるには、江東区にある東京タクシー・センターの研修が必須でね。
地理試験もここでやってるし、タクシーの助手席に、ほら立ってるでしょ、あの運転者証の発行もここです。
まあホント、会社は関係ないんでいろんな人が来てましたね、人のこと言えないけども、本当にいろんな人がね。

そういう連中が一度だけ、講習中に一同揃って爆笑になったことがあって、それだけ覚えてます。

Get Your Body - "Naughty" Adamski
MCA Records

お客さんとの接し方、みたいなのをビデオ講習で学ぶんですよ。
特に第一印象が重要なんで、つまり、お客さんが乗ってきた最初にどうするか、っていう。
タクシーの現状をみるにこれが徹底されてるとは思えないってのが、あるにはあるんですけれども。

まあ兎に角、役者さんが運転手やお客さんを何パターンか演じて、どれが正解か選ぶ、だったかな。

第一のパターンは、態度が悪い、愛想がない、暗い運転手。
お客さんが乗ってきても、前を向いたまま開口一番「どこ(に行くの)?」だけで、あとは黙ってる。
目的地を告げても復唱で返してくれないとか、一番悪いパターンで、まあ今もいるじゃん、こういう運転手。

復唱は大切で、前にも話したかもしれないけど、錦糸町と警視庁を間違えたって実話があるくらいですから。

Boss Drum - "Boss Drum" The Shamen
One Little Indian Records / Epic Records

第二のパターンはいわゆるお手本、彼を選んでおけば最低限の合格点は間違いないっていう運転手。
ドアが開くと「いらっしゃいませ」、お客さんが着座すると「ドライバーの何々と申します」、そして「どちらまで」。
復唱当然「目的地は何々でございますね、かしこまりました、シートベルトをお締めくださいませ」と流暢に。

お客さんがシートベルトを締める締めないはどうでもよくて、発進前に「締めてくれ」と告げたかどうかだけが重要。

法律っていうのはそういうもんであって、まあ、講習のビデオもそういうもんだから、面白くないでしょ。
第一のパターンの反応は皆が「ちっ、うっせーな、間違いに決まってんだろーが」みたいな反応。
第二のパターンの反応は皆が「こいつみたいにできねーからここに来てんだよ」みたいな反応。

ところが、第三のパターンは、なんでビデオに入れたのかっていうタイプの運転手だったなあ。

Rhythm Is a Dancer - "The Madman's Return" SNAP!
Arista Records

第三のパターンは、寅さん風の運転手。
ドアが開けば「へい、らっしゃい」、お客さんが着座すると同時に世間話がタメ口でレッドゾーンに。
「いやあ、今夜も暑いね~」とか言いながら、取り敢えず発進しちゃってから目的地を聞きました、みたいな。

この寅さん風の運転手が出てくる度に皆が爆笑、「いい運転手じゃねえか、面白いじゃねえか」ってね。


  ♪ タクシードライバー 苦労人とみえて
     あたしの泣き顔 見て見ぬふり
     天気予報が今夜もはずれた話と
     野球の話ばかり 何度も何度も繰り返す ♪

                  中島みゆき 「タクシー・ドライバー」より


そう、寅さんタイプの運転手って公共交通には一番向いてないんだよね、悲しいけれど。

July 20, 2015

眠記

怒りを露わにする人がいる。

怒っている人というのは、自分を鎮めるために怒っている。
そうでないと自分がどうにかなってしまうから、怒っているのだ。
相手のことを考えて怒っているのではない。

自傷行為によるストレス発散と似ている。

"Horrible Bosses" Seth Gordon
Warner Bros.

積乱雲の向こうへ、遥か彼方へ行きたい。

飛行機が頭上を通るたびに両手を挙げて俺も乗せてくれ、と叫んだりしないが、叫びたくなる。
どうせ誰もいないんだから大声で叫んだって通報されることはないだろう。
だけど、理性が叫ばせない。

まともな理性があれば、こんな絵は飾らんはずなんだ。

"Sex Tape" Jake Kasdan
Columbia Pictures

映画「アメリカン・スナイパー」は確かに凄かったが、こちらの方も小品ながら凄いと思った。

それは、クラウディア・マイヤーズ監督の映画「Fort Bliss」(フォート・ブリス)である。
こんな内容の映画が観客の共感を得て市場が成立する国というのは、恐らく米国ぐらいしかない。
ちなみに、邦題の「アイアン・ソルジャー」を考えた奴は引責辞任していい。

ただし、その邦題のセンスこそが「戦争」に対する我々の実感のなさを如実に露呈していると言ってもよい。

戦闘シーンはあるにはあるが、間違ってもドンパチを楽しむような戦争映画ではない。
主人公はシングルマザーのマギーと、彼女の息子ポール、離婚した旦那、その旦那の新しい再婚相手、等々。
まるで昼メロ、だがしかし、マギーは「ごく普通」の米兵なのだ。

これが「特殊な設定」ではないという点が、男女平等を極限まで推し進めた国の「特殊な実態」であろう。

"Fort Bliss" Claudia Myers
Yeniceri Produksiyon A.S.

大人はいいさ、好きにすれば。

だけどね、子供にとっては、辛いベッドタイム・ストーリーだろうな。

おやすみ。