July 20, 2015

眠記

怒りを露わにする人がいる。

怒っている人というのは、自分を鎮めるために怒っている。
そうでないと自分がどうにかなってしまうから、怒っているのだ。
相手のことを考えて怒っているのではない。

自傷行為によるストレス発散と似ている。

"Horrible Bosses" Seth Gordon
Warner Bros.

積乱雲の向こうへ、遥か彼方へ行きたい。

飛行機が頭上を通るたびに両手を挙げて俺も乗せてくれ、と叫んだりしないが、叫びたくなる。
どうせ誰もいないんだから大声で叫んだって通報されることはないだろう。
だけど、理性が叫ばせない。

まともな理性があれば、こんな絵は飾らんはずなんだ。

"Sex Tape" Jake Kasdan
Columbia Pictures

映画「アメリカン・スナイパー」は確かに凄かったが、こちらの方も小品ながら凄いと思った。

それは、クラウディア・マイヤーズ監督の映画「Fort Bliss」(フォート・ブリス)である。
こんな内容の映画が観客の共感を得て市場が成立する国というのは、恐らく米国ぐらいしかない。
ちなみに、邦題の「アイアン・ソルジャー」を考えた奴は引責辞任していい。

ただし、その邦題のセンスこそが「戦争」に対する我々の実感のなさを如実に露呈していると言ってもよい。

戦闘シーンはあるにはあるが、間違ってもドンパチを楽しむような戦争映画ではない。
主人公はシングルマザーのマギーと、彼女の息子ポール、離婚した旦那、その旦那の新しい再婚相手、等々。
まるで昼メロ、だがしかし、マギーは「ごく普通」の米兵なのだ。

これが「特殊な設定」ではないという点が、男女平等を極限まで推し進めた国の「特殊な実態」であろう。

"Fort Bliss" Claudia Myers
Yeniceri Produksiyon A.S.

大人はいいさ、好きにすれば。

だけどね、子供にとっては、辛いベッドタイム・ストーリーだろうな。

おやすみ。