April 3, 2017

人生

1936年、雑誌LIFEの創刊号。

この表紙を、マーガレット・バーク=ホワイトの作品「フォート・ペック・ダム」が飾ったことは有名だと思う。
それでは、LIFEの最後の表紙は何処の誰の何という作品が飾ったのか、これを即答できる人は少ないと思う。
それには原因があって、厳密には今迄に廃刊になったことが一度もなく、休刊と復刊を繰り返してきたからである。

今迄に7回の休刊があったので、つまり7つもの「最後の表紙」が存在していることになるのだ。

7回目の休刊は2007年で、現在もあくまで休刊中という姿勢なのだが、以降の版権はTIME社が所有することになった。
そして同社はLIFEというブランドを公共性の高い遺産として捉え、ウェブでアーカイブを公開するようになった。
この状況から考えるとLIFEは今後、2007年の休刊号が紙媒体としては「最後の表紙」になる、と考えていいと思う。

なお、その休刊号とは2007年4月20日号だが、やはりモノクロ時代のキレは失われているように感じる。

Margaret Bourke-White at Radio City Music Hall, New York 1935
Photo: Hulton Archive

さて、これらを舞台背景として設定したのが、2013年の映画「LIFE!」(原題:The Secret Life of Walter Mitty)だ。

監督も務めたベン・ステイラーが、コミカルだけでなくシリアスも交えて鬱々とした中年の主人公を演じている。
この主人公が2007年当時のTIME社に勤務し、LIFE部門のフィルム管理という閑職に就いているのである。
写真好きなら歓喜する閑職だし、あのTIME & LIFEビルで働けるなんて羨望の的すぎるが、映画なのでそうはいかない。

休刊号の「最後の表紙」に相応しい写真を、膨大なフィルム・コレクションから選び出すという難題に直面するのだ。

しかも絞り込んだ末、最有力候補となった写真のネガが紛失していることが発覚するのである。
撮ったのは誰だ、生きる伝説の写真家ショーン・オコンネルじゃないか、しかし彼は常に所在不定だぞ。
なんだって、彼がグリーンランドで何かを撮ろうとしてる、締め切りまで時間がない、こちらから会いに行くしかない。

といった具合にハリウッドらしいテンポで、ヒューマン系ドラマなのにアクション満載、なかなかいい映画だと思う。

ただし、伝説の写真家による「本当に撮りたい写真」に対する回答は、心中複雑な思いで観させてもらった。
この回答は、恐らく、人間(映画)としては大正解、写真家(現実)としては不正解、のような気がする。
この一点だけは、今後しばらく思い悩むことになると思うので、素直には納得しかねた。

それでもやはり、雑誌LIFEの社訓がちりばめられた旅立ちのシーンは、写真を志す者が奮い立つには充分だろう。

To see the world,
things dangerous to come to,
to see behind walls,
draw closer,
to find each other,
and to feel.

That is the purpose of LIFE.

世界を見よう、
危険に立ち向かおう、
壁を乗り越えよう、
もっと近づこう、
お互いを知ろう、
そして感じよう。

それがライフの目的だから。

Margaret Bourke-White with the first cover of LIFE magazine, 1965
Photo: Walter Daran

Saturate yourself with your subject, and the camera will all but take you by the hand and point the way.
    from Margaret Bourke-White's "Portrait of Myself"
Simon & Schuster, Inc 1963

あなたが壁に突き当たった時、カメラを手に取れば、カメラはあなたに進むべき道を指し示してくれることでしょう。
    マーガレット・バーク=ホワイト著「ポートレート・オブ・マイセルフ」より
サイモン&シュスター出版、1963年