September 8, 2012

談々

えーと、今日はどうでもいい話にします。

どうでもいい話を、だらだら、と。
毎回どうでもいい話なんだけど、いつもよりも気晴らしがしたい気分なんで、敢えて。
ごほん、最初は、と。

彼女の本名は、マータンギ・マーヤー・アルルピラガーサムって言います。
イギリス出身、タミル系スリランカ人の女性歌手で、名前の片仮名表記は限界がありますね。
国内のサイトでは、マヤ・アルプラサガムとか、単にマーヤとか書くことが多いみたいです。

彼女が M.I.A. という芸名で活動している理由は、興味があればウィキでも読んでください。
何度か来日してくれてるんですが、一般的にはあまり話題にならないですね。
このブログでは以前、彼女の Paper Plane という曲をリンクさせてもらいました。

Born Free という曲のミュージックビデオが非常に有名なんですが、賛否両論です。
アカウント認証が必要ということはエロかグロなんですけど、この曲は映像が残酷です。
もちろん作りものなんですけど、うーん、観た感想はどちらかと言えば否でした。

さて、別件のようでいて関係ある話なんですが、海外の車事情です。
数年くらい前から、中東諸国の若い人達の間で、ドリフトレースが流行してます。
こちらならヤンキー連中ってところですが、あちらは普通に銃をぶら下げてるあたりが流石です。

実はね、今、外国に行っていいなら、一番行きたいと思ってる場所が、中東諸国なんです。
旧約聖書の系譜を辿る人たちの生活に、実際に触れてみたいんです。
あのあたりを旅できたら、どんなにいいだろう、って思います。

おっと それでなんですが。
今年の上半期、 M.I.A. の Bad Girls という曲があちこちで話題になったんです。
モロッコのワルザザートっていう砂漠の街で、走り屋の地元連中と一緒に撮影してます。

で、この前、アラビア語って難しいだろうなあとか思いながら、近所のコンビニに行ったんです。
足立ナンバーの多い環七エリアですから、まあ、駐車場に族車がたむろってた訳です。
その車内から、リアーナが流れてきたから、小一時間も問い詰めずに黙って帰ってきました。

今年上半期の中では、確かに気になる話題曲でしたね、はい。

 Bad Girls - M.I.A., Vo : Maya Arulpragasam, Mv : Romain Gavras


次は、と。

前から聞いてはいたんで、いつか観たいと思ってたんです。
それが偶然、観る機会が出来たんで嬉しかった。
ノルウェーの映画で、2010年に公開されたエーリク・ショルビャルグ監督の作品「NOKAS」です。

2004年、ノルウェーのスタヴァンゲルで発生した銀行強盗事件を忠実に再現した映画です。
NOKAS(ノカス)とは Norsk Kontantservice AS を略した読みで、銀行の現金集配所です。
ここを、11人の犯人グループが襲撃、約5740万クローネ(約10億円)の現金が盗まれます。

市街地で銃を乱射してるのに、周囲の人間はなかなか気付かない。
犯人たちが武装警官を装っていたことも、警察の判断を鈍らせ、事態を悪化させています。
一般市民が犯人である武装警官に「訓練なの?」などと質問してしまうような混乱状況です。

用意周到で計画的な犯行なんですが、現場での混乱という「運」には、誰も抗えない。
信じ難いけれど、事件というのは、だからこそ事件なのかもしれないですね。
ノルウェーやヨーロッパ圏では、昨年の大量殺人テロと同様に、大変な衝撃だったそうです。

撮影は、とにかくリアリズムに徹しています。
同じリアリズムを謳っていても、ハリウッドの映画が如何に濃い味付けなのかが実感できます。
盗人にも三分のなんとかと言いますが、現実にはジョークもヒーローも存在しません。

冷たく、暗く、重い。
そこに留まり続けた監督の精神力というのは、結果は別として、凄いと思います。
そして、そういうしっかりとした作品というのは、おかしな言い方ですが、観ていて気持ちいい。

では、予告編を。

 Nokas trailer - "NOKAS" Erik Skjoldbjærg

ついでに、犯人グループが銀行裏手、半地下にある事務室から押し入ろうとするシーンを。
綿密な下調べが前提なのかと思いきや、初っ端から予想外の強化ガラスで苦戦します。
強化ガラスや防弾ガラスは、「割る」よりも「外す」ってことを考えた方が早いんだそうですね。

国内リリースの予定もないというのは、ほんと残念です。

 Ranerne forsøker å knuse ruten ! - "NOKAS" Erik Skjoldbjærg


えーと、次です。

なんか最近、YouTube が嫌な方向へ行ってる気がするんです。
なんとなくっていう、感覚にすぎませんけど。
でも、きちんと作品に取り組んでアップしていた人達が、離れていってるのは確かだと思います。

以前にも書きましたが、あの CM の割り込み方は酷過ぎる。
無料だから仕方がないという理屈は、だとしたら、いつまでも創設時の理念で偽らないでほしい。
このままなら、明らかに「あなた」ではなく、企業という「誰か」のチューブです。

利便性や安定性、物量は何処のサイトも敵いませんから、YouTube は利用させてもらってます。
Google 一括ということもあるんで、このブログでも YouTube から散々リンクさせてもらってます。
でも、でもです、いいなと思える作品が、YouTube にアップされなくなってきている。

特にアート系の映像作品に関しては酷い状況で、YouTube には期待できなくなってきています。
例えば、Vimeo に先行アップされた後で、運がよければ有志が YouTube にアップするという状況。
YouTube が先で Vimeo が後、という流れには、まずならないんじゃないでしょうか。

もちろん今後、Vimeo が何処かに買収される可能性もあります。
ただ、Vimeo の傾向でも解るように、こういうサイトの利用者は無理矢理な CM からは逃げます。
逃げるだけならまだしも、マイナスイメージすら持ってしまうでしょう。

抽象的な逃げる客じゃなく、具体的に買う客が一人でも増えればいい、という理屈も理解できます。
声をかけない接客ではなく、不特定多数に向かって怒鳴る接客、ですね。
逃げる奴は逃げてくれ、聞いてくれる奴だけ聞いてくれ、という。

怒鳴る方法による短期リターンの最大のメリットは、とにかく日銭の入りが増えるということです。
ただし、中長期リターンの最大のメリットである、信頼性については望み薄です。
このバランス感覚が掴めない企業は、CM によって自らの首を絞めてる気がします。

それじゃ、ここで CM です。

 TEDxSummit 2012 - TED Conferences LLC & Doha Film Institute, Ag : WE ARE Pi, Körner Union


そろそろ飽きてきたんで、最後。

ここ数年、ものすごく実感、いやいや、痛感しましたね。
世の中にとって、男は闘うことによってしか存在意義が持てない仕組みになってるな、と。
名詞の肩書も、両肩の徽章も、本当に同じなんですよ。

階級ってのが、負けて下がったり、逃げて剥奪されたり、あるいは、亡命して捨てたり。
軍隊じゃないはずの世の中も、要はまったく同じなんですね。
それこそ、闘いたくない男、闘えない男なんてのは、完全完璧に価値がない。

そうなれば、子供にだって「勝て、負けるな」としか説教しようがない。
いまの世の中の仕組みでは、誤魔化そうがなんだろうが、究極的にまとめるとそうなってしまう。
すごく、ものすごく、安っぽい平等という言葉と同じくらい、違和感を感じますけどね。

闘わなくてもいい男、ってのは贅沢な理想なんでしょうか。

 Table Beggar - Loose Fit, Mv : Abbie Stephens


おやすみなさい。

September 4, 2012

丙記

8月29日。

「ステロイド入りにしておくか」

二回目の通院。
ステロイド入りって、それ更に高い薬ですよね、とは聞けずに黙って頷く。
返事がないと思ったらしい医者が振り向いてきたので、もう一度頷いた。

「拡散は止まったようだがね、このままじゃ感染症が怖いから」

皮膚や神経が弱まると、部位的に感染しないはずの水虫にすら感染してしまう。
それを防ぐ為、内服薬の抗生物質と併用して、外用薬の軟膏を塗る。
これがもう独特のベタベタ感で、治療の為とは理解できても、気持ち悪いものは気持ち悪い。

「それで、抗鬱剤はどうするかね?」

前回の治療で初めて知ったのだが、要は「病は気から」ということだ。
帯状疱疹は痛みと見た目が酷く、精神衛生上で参ってしまう患者が多い。
統計的にも、細かいことを気にしすぎる人が再発しやすい、といった性格との関連があるらしい。

「因果関係は兎も角ね、どうするかね?」

考え込んでしまった。
実は、ここ数カ月間、抗鬱剤については頭の隅にあったのだ。
迷う。

「迷うくらいなら、飲まないことだね」

迷った理由は二つある。
一つ目は、経済的な事情だ。
習慣化すると、どんどん投与量を増やさねばならなくなる。

二つ目は、心情の問題だ。
例えば明日、土曜日の朝。
起きて、おはようと言う。

今言った「おはよう」は、自身が言った言葉なのか、抗鬱剤に言わされている言葉なのか。
これが解らなくなるというのは、やはり恐ろしいと思うのだ。
そして、それを恐ろしいと思える方が、気分が滅入っていたとしても正常な人間だと思うのだ。

正常な人間とは何か。
この自問自答は危険すぎる。
本当に時計仕掛けのアレックスになってしまう。

実は欲しいなとは思ってたんですが、そうですね、飲まないことにします、と、はっきり答えた。

 Saturday Come Slow - Massive Attack, Vo : Damon Albarn, Mv : Adam Broomberg & Oliver Chanarin


8月31日。

別居することにした。

ここ数カ月間、もう、話し合いで話せることはなくなっていた。
非は全てこちらにある。
こちらが単身で、9月上旬に千葉の実家へ戻る。

 Flush - Losers, Ft : Riz MC & Envy, Mv : Tom Werber


9月1日。

仕事もなく寝込んでいる傍で、子供が遊んでいる。
笑顔は、なにも理解していないし、なにもかも理解している。
よし、まだ動いて遊ぶのは無理だけど、何か一緒に、そうだ音楽でも聴こうか。

あのね、昔々、ある処に、モーツァルトっていう凄い人がいたんだ。
それでね、そのモーツァルトって人は、音楽を作るのがお仕事だったの。
でもね、ある教会のある音楽を聴いて、すごく綺麗だなあって感動したんだって。

テレビもパソコンもない大昔だから、綺麗な音楽っていうのは今よりも価値があったんだよ。
音楽を聴けるのって教会くらいしかなかったし、だから尚更、楽譜は教会の秘密だったんだ。
楽譜っていうのは音楽の元みたいなものかなあ、他の人には内緒にしてたんだね。

モーツアルトはどうしたかっていうと、まるまる全部、聴いて覚えちゃったんだ。
今、こうやって聴けるのは、モーツァルトがお家に帰って、楽譜に書いてくれたからなんだよ。
綺麗だと思うかい? 思わないかい?

どっちでもいいんだよ。
でも、ちょっとでも綺麗だと思ったら、それは素晴らしい出来事なんだ。
ミゼレーレっていうんだ、覚えてね。

駄目な父親だ。
本当に、ごめん。

ごめんよ。

 Miserere - Gregorio Allegri, LSO St Luke's in London Symphony Orchestra, Bc : BBC FOUR

September 2, 2012

乙記

8月25日。

一般的に水疱瘡(みずぼうそう)と呼ばれるウィルス感染症は、正式には水痘(すいとう)と呼ぶ。
通常、幼少期に一度発症して抗体ができると、完治後に再発することはないといわれる。
ただし、完治といっても、水痘のウィルスが全滅した訳ではない。

抗体に抑え込まれているだけであって、水痘のウィルスは身体のどこかに潜伏している。
これが、何かしらの原因によって再発することがある。
水痘のウィルスは神経節に潜伏しており、再発すると神経の経路に沿って帯状に広がっていく。

これが、帯状疱疹(たいじょうほうしん)である。

ウィルスが原因なので、免疫機能が深く関わっているのは間違いない。
しかし、仕組みそのものは現在も不明な点が多く、再発後は対症療法となる。
また、完治しても何処かに何かが残りやすく、その多くは損傷した神経系に後遺症を残す。

これが、帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)である。

 Hollow - björk, Mv : Drew Berry


昨年、この帯状疱疹で散々な目にあった。
そして、一応の完治後、二箇所に後遺症が残った。
一箇所目は、首下の背中左側のあたりで、見た目は変化ないが常にピリピリした痛みがあった。

困ったのは二箇所目、右目の瞼あたり。
ほとんど痛みはないのだが、瞼の内側に小さな裂け目ができ、ここが常に痙攣し、常に涙が出た。
涙と書けばなんだか情緒的だが、外見上は目脂が多くなったようにしか見えない。

背中の痛みは、矛盾しているが、意識的に無意識の向こう側へ押しやっていた。
右目の瞼の痙攣や涙については手の施しようがないらしく、市販の目薬などで誤魔化していた。
この二箇所の後遺症が、あれ、いつのまにか消えたなあ、と思ったのが7月中旬。

それが8月になって、左肩から左手の先にかけて、左腕全体で再発した。
昨年の診断で、今後一生の付き合いになるであろう、とは医者から言われていた。
また、再発した場合、自然治癒を望んでも我慢できる痛みではないだろう、とも言われていた。

外見上は、祟り神に憑かれたアシタカの腕にそっくりである。

 Novacane - Frank Ocean, Mv : Nabil Elderkin


 「バルトレックス、少し多めに出すから」

え、はあ、まあ、と医者の話に曖昧に答えながらシャツを着る。
曖昧な答えになったのは、バルトレックスが高い薬だから。
左腕を隠すため、カンカン照りの炎天下でもシャツは長袖。

 「必ず指定通りに飲んで、そして、薬の切れる日あたりでもう一度必ず来院するように」

こちらが薬代に躊躇したのを察してか、念を押される。
そもそも今日の薬代だって払えるかどうか。
えらく汗が出るのは、長袖を着こまねばならない身労か、財布を気にしなければならない心労か。

 「短期間の再発なんだから、いよいよ免疫機能も疑った方がいいかもしれんね」

嫌な話だ。
免疫機能の低下とか不全とか、今迄の報いか、祟りか呪いか、気分が滅入る。
すると、医者が意外なことを聞いてきた。

 「そうだな、今迄に抗鬱剤とか飲んでたこと、あるかね?」

 Sorry For Party Rocking - LMFAO, Vo : Redfoo & SkyBlu, Mv : Mickey Finnegan