8月25日。
一般的に水疱瘡(みずぼうそう)と呼ばれるウィルス感染症は、正式には水痘(すいとう)と呼ぶ。
通常、幼少期に一度発症して抗体ができると、完治後に再発することはないといわれる。
ただし、完治といっても、水痘のウィルスが全滅した訳ではない。
抗体に抑え込まれているだけであって、水痘のウィルスは身体のどこかに潜伏している。
これが、何かしらの原因によって再発することがある。
水痘のウィルスは神経節に潜伏しており、再発すると神経の経路に沿って帯状に広がっていく。
これが、帯状疱疹(たいじょうほうしん)である。
ウィルスが原因なので、免疫機能が深く関わっているのは間違いない。
しかし、仕組みそのものは現在も不明な点が多く、再発後は対症療法となる。
また、完治しても何処かに何かが残りやすく、その多くは損傷した神経系に後遺症を残す。
これが、帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)である。
Hollow - björk, Mv : Drew Berry
昨年、この帯状疱疹で散々な目にあった。
そして、一応の完治後、二箇所に後遺症が残った。
一箇所目は、首下の背中左側のあたりで、見た目は変化ないが常にピリピリした痛みがあった。
困ったのは二箇所目、右目の瞼あたり。
ほとんど痛みはないのだが、瞼の内側に小さな裂け目ができ、ここが常に痙攣し、常に涙が出た。
涙と書けばなんだか情緒的だが、外見上は目脂が多くなったようにしか見えない。
背中の痛みは、矛盾しているが、意識的に無意識の向こう側へ押しやっていた。
右目の瞼の痙攣や涙については手の施しようがないらしく、市販の目薬などで誤魔化していた。
この二箇所の後遺症が、あれ、いつのまにか消えたなあ、と思ったのが7月中旬。
それが8月になって、左肩から左手の先にかけて、左腕全体で再発した。
昨年の診断で、今後一生の付き合いになるであろう、とは医者から言われていた。
また、再発した場合、自然治癒を望んでも我慢できる痛みではないだろう、とも言われていた。
外見上は、祟り神に憑かれたアシタカの腕にそっくりである。
Novacane - Frank Ocean, Mv : Nabil Elderkin
「バルトレックス、少し多めに出すから」
え、はあ、まあ、と医者の話に曖昧に答えながらシャツを着る。
曖昧な答えになったのは、バルトレックスが高い薬だから。
左腕を隠すため、カンカン照りの炎天下でもシャツは長袖。
「必ず指定通りに飲んで、そして、薬の切れる日あたりでもう一度必ず来院するように」
こちらが薬代に躊躇したのを察してか、念を押される。
そもそも今日の薬代だって払えるかどうか。
えらく汗が出るのは、長袖を着こまねばならない身労か、財布を気にしなければならない心労か。
「短期間の再発なんだから、いよいよ免疫機能も疑った方がいいかもしれんね」
嫌な話だ。
免疫機能の低下とか不全とか、今迄の報いか、祟りか呪いか、気分が滅入る。
すると、医者が意外なことを聞いてきた。
「そうだな、今迄に抗鬱剤とか飲んでたこと、あるかね?」
Sorry For Party Rocking - LMFAO, Vo : Redfoo & SkyBlu, Mv : Mickey Finnegan