December 30, 2012

日配

先日、役所から身分証明書を取り寄せた。

戸籍謄本や住民票と同じく、個人についての「身分」を役所が証明する。
まず、本籍が何処にあって、名前は何某で、生年月日が記載される。
そして、以下の3点について記載されている。

第一に、禁治産についての宣告。
例えば、精神や知能に障害がある者、認知症の者。
家庭裁判所によって言動に責任能力なしと判断された場合、禁治産者として宣告される。

第二に、後見登記の通知。
例えば、禁治産者であった場合、何かを判断する際に誰かが代行しなければならない。
法務局が認めた者が後見人となり、通知される。

第三に、破産宣告の通知。
例えば、経済的に破綻して返済や弁済ができない者、財産を失った者。
裁判所から宣告および通知がなされる。

A4横位置に明朝体で書かれた1枚の紙切れを手にしながら痛感した。
どれも「該当なし」だが、こういう証明書を手にしているということは、今、身分は瀬戸際にある。
本当にぎりぎりの一年間だった。

悪魔は、いつも嗤っている。

Drinking From The Bottle  - "18 Months" Calvin Harris

ある程度、最低限でいいから、安定した収入が欲しい。

派遣先は仕事をくれるが、兎に角、そこへ辿りつくまでが遠い。
行き先を間違えれば無人駅に降ろされるような場所に住んでいると、どうしても余計な出費が増える。
しかも、10月に施行された労働者派遣改正法によって、単発の仕事は難しくなった。

じゃあ企業がどうやって日雇いを掻き集めているのかというと、法解釈の空即是色であって、付き合いきれない。
一方で、撮影の予約は今でも打診されるが、面白そうな撮影に限って異様に遠く、異様に朝が早い。
前泊するなら宿泊費や交通費は自分持ち、しかも前祝いの付き合い酒があるから、尚更、付き合いきれない。

いい加減、地味に、地道に、働きたい。
11月頃、現住所の近所で仕事を探し始めた。
すると、求人を募集しているような会社は近所にほとんど存在しないことに、改めて気が付いた。

タバコを買ってるコンビニですら、徒歩の行き来だけで30分はかかる。

Big Jet Plane - "Down the Way" Angus & Julia Stone

徒歩の片道で30分はかからないが、20分少々の場所に、24時間営業の大型スーパーがある。

もうなんでもいいです、仕事はありませんかと問い合わせたら、すぐ来てくれとの返事。
いきなり、スーパーの基本となる食品部門の深夜勤務でイチから仕事を学ぶことになった。
と言いつつ、経費削減の極限のような業界だから、誰かが何かを教えてくれるような余裕はない。

店長の椅子は、スプリングのバネとスポンジが盛大に飛び出したパイプ椅子だ。
漫画で見たことはあったが、実際にそういう椅子に座ってる上司というのは初めて見た。
店員の椅子は推して知るべし、座れるビールケースが用意されているだけ高待遇、らしい。

ビールケースに座ると、店長から日配(にっぱい)と呼ばれる商品管理の全てを仰せつかった。
和日配(わにっぱい)は、豆腐や納豆、ソバやウドン、カマボコやチクワ、ギョウザやシュウマイなど。
洋日配(ようにっぱい)は、牛乳やヨーグルト、バターやチーズ、プリンやゼリー、ジュースやコーヒーなど。

賞味期限の順に如何に効率よく捌くか、それだけだから、頼んだよ。
それだけ、ですか。
うん、それだけだから。

夜な夜な、冷蔵庫に籠る。

"Day 'n' Nite" Kid Cudi

お客様には、賞味期限の順に商品をお買い上げ頂きますよう、何卒お願い申し上げます。