Photos are for people who can't remember, Drink some ginkgo and let the photos burn.
写真?
心に刻めない記憶なんて、燃やしちまえ。
(以上、岸田恵子さんの翻訳は確かこんな感じだったと思う)
"Up in the Air" Walter Kirn Doubleday, US 2001 |
企業再建と人材育成を請け負うCTC社に勤めてる。
不況こそ我が社のチャンス、要は、経費削減と人員整理だ。
全米各地への出張は年間で300日近く、最早空港がマイホーム同然になってる。
俺の担当は、首切り専門のダウンサイザー(解雇通告人)だ。
Worker A : On a stress level, I've heard that losing your job is like a death in the family.
But personally, I feel more like the people, I worked with were my family and I died.
従業員 A : ストレスの程度でいうと、仕事を失うことは家族を失うのと同じくらいだと聞いたことがあるんだ。
だけど個人的に、僕の感想だけど一般的にはもっと、家族の死なんかじゃなくて僕自身の死だ。
Worker B : I can't afford to be unemployed.
I have a house payment, I have children.
従業員 B : 失業するわけにはいかないんです。
私には家の支払いがあるし、子供たちがいるんです。
Worker C : I don't know how you can live with yourself,
but I'm sure that you'll find a way while the rest of us are suffering.
従業員 C : 理解できない、あんたよく平気でいられるな、
あんたは先があるんだろうが、私たちは苦しんでるんだぞ。
Worker D (Steve) : Who the fuck are you, man?
従業員 D (スティーブ) : あんた何様なんだ?
Ryan : (Excellent question. Who the fuck am I?
Poor Steve has worked here for seven years.
He's never had a meeting with me before,
or passed me in the hall, or told me a story in the break room.
That's because I don't work here.
I work for another company that lends me out to pussies like Steve's boss
who don't have the balls to sack their own employees, in some cases for good reason.
Because people do crazy shit when they get fired.)
ライアン : (いい質問だ、俺は何様か?
このスティーブって奴は7年間ここで働いてきた。
彼は俺と会ったことがないし、
ホールですれ違ったことも、休憩室で話し合ったこともない。
俺はここで働いていないのだから。
俺はまともな説明もできなくて自分からクビを言い渡せない、スティーブの腰抜け上司に雇われた。
クビを宣告された時、人間は何をしでかすか解らないからだ。)
Steve : Did I do something wrong?
I mean, is there something I could do differently here ... ?
スティーブ : 俺が何か失態を?
そうだな、俺がここで改善できることがあれば・・・?
Ryan : This is not an assessment of your productivity.
Try not to take this personally.
ライアン : これはあなたの生産性を査定してるわけではないんです。
個人的資質とは関係ありませんよ。
Steve : Don't, personally ...
スティーブ : 個人的資質じゃない、ね・・・
Ryan : Steve, I want you to review this packet.
Take it seriously.
I think you're gonna find a lot of good answers in here.
ライアン : スティーブ、この資料一式をよく読んで欲しいんです。
真剣にです。
ここにはあなたにとって多くの良い答えがあるはずです。
Steve : I'm sure this is gonna be very helpful, a packet.
Thank you ... A packet.
スティーブ : 俺にとって物凄く参考になるんだろうな、資料一式が。
有り難いよ、資料一式。
Ryan : Well, anybody who ever built an empire or changed the world sat where you are right now.
And it's because they sat there they were able to do it.
That's the truth.
ライアン : いいですか、かつて帝国を築いた者たちも、時代の節目に今のあなたと同じように座っていた。
そして、これ(現状)をバネにして彼らは成し遂げたんです。
本当ですよ。
Steve : ...... (Yes.)
スティーブ : ・・・・・・(そうだな)。
Ryan : I'm gonna need your keycard.
ライアン : キーカード(IDカード)を回収しなければなりません。
Steve : ......
スティーブ : ・・・・・・
Ryan : Great, Okay.
Now, I want you to take the day, go get together your personal things,
then tomorrow, you get yourself some exercise.
You go out for a jog, you give yourself some routines and pretty soon you find your legs.
ライアン : 流石ですね、確かに。
さて、今日はあなたの私物を一緒に片付けましょうか、
明日になったら、何か運動でもするといいですよ。
ジョギングするとか、何かを日課にすればそのうちに落ち着くものです。
Steve : How do I get in touch with you?
スティーブ : あんたとの連絡方法は?
Ryan : Don't worry, we'll be in touch with you soon.
This is just the beginning.
ライアン : 心配ありません、じきに弊社から連絡します。
ここからが始まりなんです。
二度と会うことはないけどな。
George Clooney as Ryan Bingham "Up in the Air" Jason Reitman Paramount Pictures |
俺の上司、クレイグは「恐竜になるな」と言う。
そんな俺にも時代の節目がやってきた。
注目の新入社員ナタリー・キーナーは優秀で、彼女の提案にクレイグが飛びついたのだ。
恨むならどんどん進むテクノロジーを恨むがいいさ、出張の人員も経費も大幅に減らせるのだから。
それは「解雇通告をネットで済ませる」というもの。
俺の仕事は、生身の相手を不安の底に突き落とす仕事だ。
面倒な人間関係は抱え込まない主義だが、解雇宣告において相手を尊重する気持ちだけは守ってきたつもりだ。
ナタリーを現場で勉強させてやれというクレイグに、俺はどれほど文句を言いたかったことか。
彼氏から「別れ話をメールで済まされた」と、泣き出しちまうような奴なんだぞ。
Natalie : Never?
ナタリー : 一度も?
Ryan : No.
ライアン : ない。
Natalie : Ever?
ナタリー : 絶対に?
Ryan : No.
ライアン : ない。
Natalie : Never you want to get married?
ナタリー : 一度も結婚したかったことがないんですか?
Ryan : Nope.
ライアン : なかったよ。
Natalie : Never want kids?
ナタリー : 一度くらい子供が欲しいって?
Ryan : Not a chance.
ライアン : お断りだ。
Natalie : Ever?
ナタリー : 絶対に?
Ryan : Never.
Is that so bizarre?
ライアン : 一度もね。
そんなにヘンか?
Natalie : Yes.
Yes, it is.
ナタリー : はい。
ええ、それは。
Ryan : I just don't see the value in it.
Right, sell it to me.
ライアン : そういうことに価値を見い出せないんだよ。
よし、俺に売り込んでみろ。
Natalie : What?
ナタリー : 何を?
Ryan : Sell me marriage.
ライアン : 結婚を売り込んでみろ。
Natalie : Okay, how about love?
ナタリー : いいですよ、愛はどうですか?
Ryan : (Giggle) ... Okay.
ライアン : (クックック)・・・結構だ。
Natalie : Stability, just somebody you can count on ...
ナタリー : 安定、それに頼ることができる誰か・・・
Ryan : How many stable marriages do you know?
ライアン : 安定した結婚なんて何件知ってる?
Natalie : Somebody to talk to, someone to spend your life with?
ナタリー : 人生を過ごす上で、話し相手は?
Ryan : I'm surrounded by people to talk to.
I doubt that's gonna change.
ライアン : 俺の周りはお喋りな人間でいっぱいだ。
それを改善したいくらいだね。
Natalie : ... Phew.
ナタリー : ・・・ふう。
Natalie : How about just not dying alone?
ナタリー : 孤独死はどうですか?
Ryan : Starting when I was 12, we moved each one of my grandparents into a nursing facility,
my parents went the same way.
Make no mistake, we all die alone.
Now, those cult members in San Diego, with the Kool-Aid and the sneakers ...
they didn't die alone.
I'm just saying there are options.
ライアン : 俺が12歳になった時だ、祖父母は介護施設に入って、
両親も同じように入った。
間違いなく、人間死ぬ時は一人だ。
まあ、一部のカルト宗教、サンディエゴやクール・エイド※、酷い連中は・・・一人で死なないか。
人それぞれってことだな。
※前者はヘヴンズ・ゲート事件、後者は人民寺院事件のこと。
Natalie : ......ナタリー : ・・・・・・
Ryan : ... Oh, fuck.
ライアン : ・・・おい、マジか。
Natalie : Brian left me!
ナタリー : ブライアン(彼氏)は私を捨てたんです!
Ryan : Hey-hey ... Okay-okay, All right ... All right ... Shh, shhh ... Yeah, uh ...
ライアン : おいおい・・・大丈夫大丈夫、解った・・・解ったよ・・・シー、シーッ・・・そうか、うーん・・・
Alex (Alexandra) : ......
アレックス(アレクサンドラ) : ・・・・・・
Ryan : Hey ... er, Natalie, this is Alex, my friend.
This is Natalie.
ライアン : やあ・・・えーと、ナタリー、こちらアレックス、友達だ。
ナタリーだ。
Alex : I should give you both a moment.
アレックス : お互いに時間が必要みたいね。
Natalie : No, No, That's fine.
I'm fine.
It's a pleasure to meet you.
ナタリー : いえ、いえ大丈夫です。
平気です。
お会いできて嬉しいです。
Ryan : You should just all go up to rooms and freshen up.
ライアン : 君(ナタリー)は一旦部屋に入って軽くサッパリした方がいいな。
Alex : ... Maybe a drink?
アレックス : ・・・ちょっと飲む?
Natalie : Now you're talking!
ナタリー : あなた(アレックス)とお話します!
友達と紹介したアレクサンドラ・ゴーランは俺と似たような出張族で、お互いに割り切った関係だ。
面倒なことは重なるもんだ。
メールで女を振った男を「下衆野郎」と言い放ったアレックスとナタリーは気が合うようだが、じゃあ俺はどうなる。
ナタリーも生意気というか真面目すぎるのだろう、いつもパソコンに恨みがあるがごとくキーボードを叩いてる。
そんなある日、しばらく疎遠になっていた姉のカーラから電話があった。
妹のジュリーが結婚することになったので、出張の多い俺に行く先々で写真を撮ってきてほしいというのだ。
妹が結婚する相手の男は不動産屋だ。
不動産への投資に新居、挙式などでお互いの貯金は余裕がなくなり、新婚旅行は諦めようとなった。
そこで、せめて二人の写真だけでも旅をした、ということにしたいらしい。
ほらな、面倒なことは重なるんだ、妹たちの写真がスーツケースに入らんぞ、手伝ってくれ。友達と紹介したアレクサンドラ・ゴーランは俺と似たような出張族で、お互いに割り切った関係だ。
Vera Farmiga as Alexandra "Alex" Goran (L)、Anna Kendrick as Natalie Keener (R) "Up in the Air" Jason Reitman Paramount Pictures |
メールで女を振った男を「下衆野郎」と言い放ったアレックスとナタリーは気が合うようだが、じゃあ俺はどうなる。
ナタリーも生意気というか真面目すぎるのだろう、いつもパソコンに恨みがあるがごとくキーボードを叩いてる。
そんなある日、しばらく疎遠になっていた姉のカーラから電話があった。
妹のジュリーが結婚することになったので、出張の多い俺に行く先々で写真を撮ってきてほしいというのだ。
妹が結婚する相手の男は不動産屋だ。
不動産への投資に新居、挙式などでお互いの貯金は余裕がなくなり、新婚旅行は諦めようとなった。
そこで、せめて二人の写真だけでも旅をした、ということにしたいらしい。
Natalie : What happened to Alex?
ナタリー : アレックスはどうしたんですか?
Ryan : She had to leave town early to get to a meeting.
ライアン : 彼女はここ(マイアミ)をとっくに発って会議に出席だ。
Natalie : That's too bad.
Where does she live?
ナタリー : 大変ですね。
どこに住んでるんですか?
Ryan : Chicago.
ライアン : シカゴ。
Natalie : Thinking of going to see her?
ナタリー : 会いに行こうって思わないんですか?
Ryan : We don't really have that kind of relationship.
Try it over there.
ライアン : 俺たちはそんな親しい関係じゃないよ。
そこでやってみようか。
Natalie : What um ... kind of relationship do you have?
ナタリー : じゃあどういう・・・関係なんですか?
Ryan : Well, you know ... casual.
ライアン : さてと、気軽な・・・かな。
Natalie : Sounds pretty special.
ナタリー : かなり特殊、でしょ。
Ryan : It works for us.
ライアン : 俺たちには合ってる。
Natalie : Do you think there's a future there?
ナタリー : それって将来どうなるんですか?
Ryan : I never really thought about it.
What's going on here?
ライアン : それを本気で考えたことはないな。
なんだよどうしたんだ?
Natalie : Really never thought about it?
ナタリー : 本当に一度も考えたことがないんですか?
Ryan : No.
ライアン : ないね。
Natalie : How can you not think about that?
How does it not cross your mind that you might want a future with someone?
ナタリー : どうして考えられないんですか?
どうして誰かと生きる将来を少しも考えないでいられるんですか?
Ryan : It's simple.
You know that moment, when you look into somebody's eyes and you can feel them
staring into your soul and the whole world goes quiet, just for a second?
ライアン : 簡単さ。
誰かと目が合ってお互いの気持ちが通じ合うと一瞬で世界が静まり返るってやつ、
君も経験したことがあるだろ?
Natalie : Yes.
ナタリー : あります。
Ryan : Right.
Well, I don't.
ライアン : だろ。
よし、俺はない。
Natalie : You're an asshole!
ナタリー : あんた最低!
Ryan : No, I'm just dicking around.
Come on, Give me a hand.
ライアン : 違うって、ふざけただけだよ。
おい、手伝ってくれ。
Natalie : Don't you think it's worth giving her a chance?
ナタリー : 彼女にチャンスをあげようって考えたことは?
Ryan : A chance for what?
ライアン : 何のチャンスだ?
Natalie : A chance at something real!
ナタリー : 本物(の関係)になるチャンスよ!
Ryan : Natalie, your definition of real will evolve as you get older.
ライアン : ナタリー、本物の定義ってのは君も歳を取れば変化するものなんだよ。
Natalie : Can you stop condescending for one second, or is it a principle of your bullshit philosophy?
ナタリー : 見下さないでよ、それともその原則もあんたの馬鹿な哲学なわけ?
Ryan : Bullshit philosophy?
ライアン : 馬鹿な哲学?
Natalie : The isolation, the travelling, Is that supposed to be charming?
ナタリー : 孤独、旅、そんなのが格好いい?
Ryan : No, it's simply a life choice.
ライアン : 違う、単純な人生の選択だ。
Natalie : It's a cocoon of self-banishment!
ナタリー : 繭の中に引き篭もってるのよ!
Ryan : Wow, Big words.
ライアン : おい、言うじゃないか。
Natalie : Screw you!
ナタリー : くたばれ!
Ryan : Ahh, screw you, too!
ライアン : ああ、お前こそくたばれ!
Natalie : You have set up a way of life that basically makes it impossible
for you to have any human connection!
And now this woman comes along and somehow runs the gauntlet of your ridiculous life choice,
and comes out on the other end smiling just so you can call her 'casual' ?
I need to grow up?
You're a 12 year old!
ナタリー : あんたの決めた生き方じゃ、本来なら人との繋がりなんて不可能なのに!
そこへ今、あんたの馬鹿げた人生設計の殻の中になぜか女性が飛び込んできてくれたのよ、
そして(彼女は)笑顔のまま去ろうとしてる、それを「気軽」呼ばわり?
大人になる必要がある?
あんたなんか12歳のガキよ!
Ryan : I don't have a gauntlet ...
... Fuck!
ライアン : 俺は殻なんて・・・
・・・畜生!
ずぶ濡れになったが、面倒はこれで終わりではなかった。
Take photos of Julie & Jim on cardbord in interesting places. "Up in the Air" Jason Reitman Paramount Pictures |
デトロイトは歴史的に組合の活動が最も盛んなエリアのひとつだ。
だからこそ、上司のクレイグはこの街をテストに選んだのだろう。
試験的にだが、直接対面式ではなく、ビデオチャットを利用した解雇システムを初めて運用することになった。
この提案者はナタリー自身だし、クレイグの判断は翻訳しなくたって雰囲気で解るだろう?
今日の解雇ノルマは40人、これは、まだ最初の一人目だ。
Glocal? You can set up an Video Chat, but you don't know how people think. "Up in the Air" Jason Reitman Paramount Pictures |
俺は、どんな悪条件で解雇しても訴えられない方法はいくらでも知っている。
だが、解雇される側のショックは想像以上だ、彼らに出来ることは訴えることだけじゃない。
ナタリーはある出来事があって、責任を感じたとは思いたくないが、辞めた。
そういえば、彼女は解雇後の追跡調査を気にしていたっけ。
再就職に励む彼女の様子を人伝に聞いて、俺は誰かを採用する方法は何も知らないことに気付いた。
ありきたりだが、人生とはなんなのだろう。
そんなことを考えすぎるのはあまり体によくない。
ただ、誰でも何度かは、人生の意味について考える機会がやってくる。
俺の「マイレージを1000万マイル貯める」という夢も、いざ達成してみれば特に思いつく言葉はなかった。
Julie & Jim's honeymoon "Up in the Air" Jason Reitman Paramount Pictures |
そうそう、まだ話していなかったことがあったな。
アレックスとの関係はどうなったのか?
たくさん写真を撮った、妹たちの結婚式は?
今、俺は何をしている?
それは、いつか話す相手に巡り合あった時、話そうと思う。
Tonight, most people will be welcomed home by jumping dogs and squealing kids.
Their spouses will ask about their day and tonight they'll sleep.
The stars will wheel forth from their daytime hiding places.
And one of those lights, slightly brighter than the rest ... will be my wing tip passing over.
今宵、人々は家に帰り、飛び跳ねる犬や大騒ぎする子供に出迎えられるだろう。
お互いにその日の話をして、彼らは眠りにつくのだ。
星々が昼間の隠れ家から出てきて天球を巡る。
そして、その光の中のひとつ、他よりも少し明るい輝きは・・・俺を乗せた翼かもしれない。
Goin' Home by Dan Auerbach - from "Up in the Air: Music from the Motion Picture" Rolfe Kent, US 2009
"Up in the Air" Jason Reitman Paramount Pictures |
おやすみ、ライアン。