October 7, 2018

壊戒

Thank you all for your bidding.
Four hundred million selling here at Christie’s.
And the piece is... sold!

ご入札いただき誠にありがとうございました。
クリスティーズは4億(ドル)でお売りいたします。
従いまして当作品は・・・落札です!

The Last da Vinci
Christie's

昨年11月、美術品関連のオークション史上で最高額となる作品が出た。

世界で唯一の個人所蔵品だった、ダ・ビンチの絵画「サルバトール・ムンディ」である。
クリスティーズが10%程度の手数料を取るので実売価格は4億5千万ドル、日本円で約508億円となった。
落札価格は兎も角、右から左で5千万ドルも取んのかよと思うが、管理費や保険料だけで数億円というから仕方がない。

消費税だっていずれ10%になる訳だから、似たようなもんだ。

それにしても、こういう売買の中継を見ていると見事に金銭感覚が狂う。
ギリギリで競り合うといっても、数分間で数億円単位のビットを掛け合っていくのだ。
感覚としては、缶コーヒーを買う時に100円のやつか120円のやつかで思案するような感じなのか。

おお、財布の小銭が結構あるから消費税を考えても150円のコーヒーまでいけるかも、みたいな。

ま、貧乏人は放っておいて、今年は目玉商品が、失礼、注目作品があまり出ないなと思っていたのである。
注目作品はオークション各社のプレビュー(入札予定者の下見と話題作りを兼ねた展示会)がニュースになる。
ここ最近そういうのを見かけないなあと思っていたが、とんでもないニュースが入った。

イギリス在住のストリート・アーティスト、バンクシーによるアクリル画「赤い風船に手を伸ばす少女」だ。

顔はもちろん、名前も年齢も性別も経歴も不明、複数人同時存在説まである、ゴルゴ13みたいな覆面芸術家だ。
街中の壁にゲリラ的に描く手法なので、現代版のキース・へリングみたいな位置づけなのか、結構な人気がある。
その彼(彼ら?)が、ちゃんとしたキャンバスに描いて立派な額に入れた作品、ということで話題にはなっていたらしい。

そして昨日の10月6日、サザビーズにこの「赤い風船に手を伸ばす少女」が出た。

予想落札価格は20万から30万ポンド。
開始数分で跳ね上がり、最終的な落札価格は86万ポンド、日本円で約1億3千万円となった。
そして、オークショナーが「もうありませんか? ありませんか? 落札です!」とハンマーを打ち鳴らした瞬間・・・

"Balloon Girl" Banksy
Horrified Sotheby's bidders watched as the work was destroyed,
and Banksy reacted saying "Going, going, gone"
The Daily Mirror

... Once the hammer went down on a winning bid of £860,000 - worth £1.04million when a buyer's premium was added - the piece was shredded by a mechanism hidden in the frame's base.

・・・約1億3千万円(買い手が支払う手数料を加えると約1億5千万相当)で落札された途端、額の中に隠されていた装置によって作品が裁断(シュレッダー)されてしまった。

Stunned art lovers gasped as the piece was destroyed, with parts of it emerging in strips from the frame.

芸術愛好家たちがこの破壊に愕然とする中、作品は細切れになって額から垂れ下がっていた。
6 Oct 2018
         The Daily Mirror, UK

「バンスキーの絵画『少女と風船』、100万ポンドで売却された数秒後に自滅」
2018年10月6日
         デイリー・ミラー(電子版)、イギリス

落札者に聞いたら「驚いた」って、そりゃ誰でも驚くっての!