July 2, 2012

噤紡

気が付いたら5分は経っていた。

コンビニの飲み物コーナー。
ペットボトルや缶ではなく、ストローを挿して飲むような飲み物のコーナー。
アイスコーヒーを買おうとして、予想外に迷った。

レジに行く。
タバコの銘柄を伝えながら、150円くらいの値段のアイスコーヒーを置く。
店員の女の子はタバコを手に取ると、振り向きざまにこう言った。

「これ、美味しいんですよ」

 Awkward - San Cisco, Vo : Jordi Davieson & Scarlett Stevens, Mv : Andrew Nowrojee


「200円以上なら、店に行った方がいいよね」

100円前後はまあそういう値段の味、200円以上になるとドトールなどの店の味と被る。
そうすると、コンビニでちょっと凝った選択なら150円前後のアイスコーヒーが妥当なのではないか。
そういう意味で、咄嗟に応じて言葉を返してしまった。

店員の女の子はその意味を呑んで、賛同してくれたらしい。
らしいが、話は続かない。
お金を払いながら、何も言わなければよかったと後悔した。

ボールは床に落ち、転がって、止まった。

 Somebody that I used to know - Gotye, Vo : Wally & Kimbra, Ft : Kimbra, Mv : Natasha Pincus


どんな物語でも、出だしは面白い。

どんな物語でも、だ。
その先には無限の選択肢、大きな可能性がある。
どうなるんだろうと思わせてくれること以上に、面白いことはない。

どんな物語でも、進むにつれてつまらなくなる。
選択肢はどんどん減り、可能性はますます押し潰されて小さくなる。
予想外の展開とかよく言うが、選択肢が減るという現実がある以上、それは幻想にすぎない。

どんな物語でも、結末は残酷だ。
選択肢はもう何も残っていない。
つまり、ハッピーエンドであっても、可能性は無になっているという証明だ。

だから、何度でも、飽きずに、人は物語を紡ぐ。

 She Wants - Metronomy, Vo : Joseph Mount, Mv : Jul & Mat, Solab