必要な時に始まり、必要な時に終わった。
王様が寝室から執務室へ移動する際の小曲、司祭が昼夜をかけて祈る際の大曲、といった具合。
状況次第の生演奏で、状況は常に変化するから、演奏時間も常に変化していた。
現代に繋がる音楽で、大きく影響している最初のメディアはSP盤だろう。
1940年代の話なので、ラジオのプログラムも大きく影響している。
音楽は、SPの最大収録時間である約4分30秒に納まるように作曲されるようになった。
当時のヒット曲は今でもオールディーズとしてあちこちで耳にするが、2分~3分程度の曲が多い。
プレスリー初期の Heartbreak Hotel など、オリジナルはたったの2分8秒しかない。
恐らく、あれだけのスローテンポで大ヒットを記録する短い曲というのは、もう登場しないのではないか。
そして、大量消費社会が到来する。
The Twist - "Twistin' round the world" Chubby Checker |
LP盤の普及は1950年代の後半以降である。
最大収録時間は片面で約30分、最初から両面収録の規格だったので、合計で約60分となった。
これに、ロック史上の当たり年と呼ばれる1962年以降が重なる。
リバプール・サウンド、ブリティッシュ・インべージョンのムーブメントについては説明の必要がない。
言葉通り、もはや戦後ではなく、生活の中で音楽を楽しむための余力ができるようになった。
同時に、マーケットも一部のパトロンではなく、購買力を持ち始めた一般の若年層に左右されるようになった。
この辺りから、一曲あたりの時間が4分から5分程度に伸び、「アルバム」という考え方が誕生する。
アルバムでは、ミュージシャンの世界感が選曲や曲順などの構成で表現される。
ヒット曲でなくとも、アルバムに組み込むことで相互に補完しながら意味を持つような曲も出てくるようになった。
構成だけでなく、編曲も含めた「バージョン」という考え方が一般に認識されるのもこの頃からだろう。
試行錯誤のほとんどは、1970年代までに出尽くしている。
1980年代の中頃、LPの販売枚数をCDが追い抜くようになる。
CDは片面収録のみの規格で、最大収録時間が約74分。
当初はアナログのLP音源をそのままデジタル変換してCDにしたものが大半だった。
その為、LPのアルバムではA面からB面へ裏返していた、物理的にも構成的にも区切られた部分が消滅する。
関係者の回顧録などを読むと、この区切りの消滅には相当戸惑ったらしい。
A面とB面という区切りを、マイナスではなくプラスと考える傾向もあったのだ。
後々、ヒット曲の並ぶA面よりも、実験的な構成のB面が評価される、といったことも少なくなかった。
演じ手にとっても聴き手にとっても、特に、ポピュラー・ミュージックで連続74分は長丁場なのではないか。
そう戸惑う関係者がいる一方で、この長い収録時間を歓迎するクラシック音楽以外の関係者もいた。
背景には、MTVの開局とビデオデッキの普及があった。
マイケルの Thriller は、1982年にリリースされたアルバム「スリラー」から1984年にカットされている。
実は先に、ビリー・ジーンやビート・イットがカットされており、最後の最後にカットされた7番目のシングルだった。
先行した6曲で売れると見込まれて、スリラーをカットする際には前例のない金額の予算が投入された。
スリラーはカットされたシングルと共に、ミュージックビデオ(以下MV)が大ヒットする。
シングルとしては約6分の曲なのだが、MVはオリジナルで約14分もあるので埋めるようにアレンジされた。
予算の大部分はMVに費やされており、それでも充分な利益が回収できることを証明した最初のヒット曲だろう。
ピンからキリまで、ミュージシャンがアーティストと名乗るようになった。
1990年代以降というのは、まだ生々しすぎる。
アルバムに収める曲、MVとしてテレビで流す曲、ラジオで流す曲、宣伝用に短くアレンジした曲。
同じ曲でも編曲が異なり、その違いそのものも楽しむ「リミックス」という考え方が当たり前になった。
1990年代というのは、今迄のアルバムという概念が崩壊する、最初期の頃であったと思う。
同時に、誰もが聴いたことのある曲、皆が時代感覚を共有できるようなヒット曲が、極端に減っていく。
国内の紅白歌合戦でも、選曲に苦悩していることが報じられるようになったのはこの頃からではないか。
2000年代に入ってからは、ご存じの通りだ。
最大収録時間は片面で約30分、最初から両面収録の規格だったので、合計で約60分となった。
これに、ロック史上の当たり年と呼ばれる1962年以降が重なる。
リバプール・サウンド、ブリティッシュ・インべージョンのムーブメントについては説明の必要がない。
言葉通り、もはや戦後ではなく、生活の中で音楽を楽しむための余力ができるようになった。
同時に、マーケットも一部のパトロンではなく、購買力を持ち始めた一般の若年層に左右されるようになった。
この辺りから、一曲あたりの時間が4分から5分程度に伸び、「アルバム」という考え方が誕生する。
アルバムでは、ミュージシャンの世界感が選曲や曲順などの構成で表現される。
ヒット曲でなくとも、アルバムに組み込むことで相互に補完しながら意味を持つような曲も出てくるようになった。
構成だけでなく、編曲も含めた「バージョン」という考え方が一般に認識されるのもこの頃からだろう。
試行錯誤のほとんどは、1970年代までに出尽くしている。
Bee Gees - 1977 Billboard Awards, NBC Television |
1980年代の中頃、LPの販売枚数をCDが追い抜くようになる。
CDは片面収録のみの規格で、最大収録時間が約74分。
当初はアナログのLP音源をそのままデジタル変換してCDにしたものが大半だった。
その為、LPのアルバムではA面からB面へ裏返していた、物理的にも構成的にも区切られた部分が消滅する。
関係者の回顧録などを読むと、この区切りの消滅には相当戸惑ったらしい。
A面とB面という区切りを、マイナスではなくプラスと考える傾向もあったのだ。
後々、ヒット曲の並ぶA面よりも、実験的な構成のB面が評価される、といったことも少なくなかった。
演じ手にとっても聴き手にとっても、特に、ポピュラー・ミュージックで連続74分は長丁場なのではないか。
そう戸惑う関係者がいる一方で、この長い収録時間を歓迎するクラシック音楽以外の関係者もいた。
背景には、MTVの開局とビデオデッキの普及があった。
マイケルの Thriller は、1982年にリリースされたアルバム「スリラー」から1984年にカットされている。
実は先に、ビリー・ジーンやビート・イットがカットされており、最後の最後にカットされた7番目のシングルだった。
先行した6曲で売れると見込まれて、スリラーをカットする際には前例のない金額の予算が投入された。
スリラーはカットされたシングルと共に、ミュージックビデオ(以下MV)が大ヒットする。
シングルとしては約6分の曲なのだが、MVはオリジナルで約14分もあるので埋めるようにアレンジされた。
予算の大部分はMVに費やされており、それでも充分な利益が回収できることを証明した最初のヒット曲だろう。
ピンからキリまで、ミュージシャンがアーティストと名乗るようになった。
Thriller - "Thriller" Michael Jackson |
1990年代以降というのは、まだ生々しすぎる。
アルバムに収める曲、MVとしてテレビで流す曲、ラジオで流す曲、宣伝用に短くアレンジした曲。
同じ曲でも編曲が異なり、その違いそのものも楽しむ「リミックス」という考え方が当たり前になった。
1990年代というのは、今迄のアルバムという概念が崩壊する、最初期の頃であったと思う。
同時に、誰もが聴いたことのある曲、皆が時代感覚を共有できるようなヒット曲が、極端に減っていく。
国内の紅白歌合戦でも、選曲に苦悩していることが報じられるようになったのはこの頃からではないか。
2000年代に入ってからは、ご存じの通りだ。
YouTube に代表される動画サイトの影響は大きい。
最早、スピーカーの前にじっと座り、曲順に従って小一時間も聴き込むという人は絶滅危惧種だ。
アルバムという感覚は、一般の聴き手からはほとんど消滅してしまったのではないだろうか。
一曲あたりの時間感覚はまだ1990年代を引き摺っており、短くて5分から6分、長くて7分から8分か。
それよりも、2010年代に入って急激に増えたのが「フィーチャー」で、カップリングを強調する曲。
明らかにキーワード検索への対策にフィーチャーしているだけの曲が、あるような、ないような。
一曲あたりの時間感覚はまだ1990年代を引き摺っており、短くて5分から6分、長くて7分から8分か。
それよりも、2010年代に入って急激に増えたのが「フィーチャー」で、カップリングを強調する曲。
明らかにキーワード検索への対策にフィーチャーしているだけの曲が、あるような、ないような。
音楽に理屈はいらない、決まりごとなんてない。
でも、少しだけこんな風に思うこともある。
音楽は、豊かになったのか、貧しくなったのか、どちらなのか。
豊かになったのだ、と思いたい。
豊かになったのだ、と思いたい。