気付くままに行動すると、それが余計な親切になったり、お節介になってしまうことがある。
ワンテンポ、と言っても一瞬の判断になるが、ちょっとくらいは考えるようにした方がいい。
気付いても気付かないフリをする、それが最良の心遣いとなる時もあるのだ。
それが出来ないなら、いっそのこと本当に鈍感な方がいい。
不躾で身勝手な奴かもしれないが、正直な奴ではあるのだから。
そこに悪意はない。
ただし、鈍感な奴の善意というのも、困ったものではあるが。
今の職場の全体的な男女比率は、約3対7くらいだろうか。
冷凍庫、じゃなくて冷凍「室」は、マイナス25度以下に設定されている。
この中で在庫確認などしていると、外から持ち込んだ台車の鉄パイプが熱収縮でミシミシと唸りはじめる。
そろそろ限界と思って、冷凍室を出る。
冷凍室を出るとバックヤードの廊下になるが、トラックの荷降ろし場に面しているので外気と同じ気温だ。
コンクリートの床や壁に霜が降りているので今晩は零度前後くらいか、などと思いながら台車を押していく。
行政区分としては一括りかもしれないが、自然環境として本当にこの地域は関東圏なのかと疑うくらい、寒い。
冷蔵庫、じゃなくて冷蔵「室」は、約3度に設定されているので一番暖かい。
店内を除き、バックヤードの中では本当に冷蔵室が一番暖かいのだ。
冬は働けば体が動くから温まるはず、夏は冷凍室か冷蔵室で働けるだけ有り難く思え、という感覚。
経費削減も含めて1円単位でやりくりする商売だから、事務室や休憩室も空調はあるが使用禁止。
もしかしたら、バックヤードに引っ込まないで店内へ出て仕事しろ、という工夫された方法なのかもしれない。
ただ、スタッフの喫煙率が高いのは有り難く、ちゃんとした喫煙室があって、その中にはホットドリンクもある。
一段落ついて一服していると、数人のパートのおばさん達が入ってきた。
"I Now Pronounce You Chuck & Larry" Dennis Dugan |
あちらがおばさんなら、こちらも同世代のおじさんなのだが、多勢に無勢で話題は次の2点に絞られる。
まず、こちらの履歴。
履歴というか、要は何故ここに入社したのか、という面接の如き理由を根掘り葉掘り聞かれる。
はあ、まあ、その、といった感じで流そうとするのだが、正直に言いなさいよ的なおばさん達の迫力には負ける。
それでも曖昧に誤魔化していると、飽きてきくるのだろう、次の話題になる。
店長がどうの、店員がどうの、新人がどうの、客がどうの、という仕事に関する放談を聞かせてくれる。
壁に耳あり障子に目ありという諺は、同調しないと仲間外れにするわよ的なおばさん達の迫力には負ける。
聞いてません知りませんだけでは誤魔化しきれなくなってきた頃、こちらの休憩時間が終わる。
おばさん達というのは好意的に考えれば社交的だから、助かると言えば助かることもあるのだ。
実際、彼女達の会話に出てくる商品というのは、大いに仕入れの参考になったりする。
これが男同士だと、休憩室に入ってきてもウッスの会釈で終わり。
雑談という名の情報共有には興味がなく、そればかりか業務上の質問にすら答えてくれなかったりする。
そういう、無言の背中から学ぶという世界は嫌いではないが、根性は必要になる。
これが男同士だと、休憩室に入ってきてもウッスの会釈で終わり。
雑談という名の情報共有には興味がなく、そればかりか業務上の質問にすら答えてくれなかったりする。
そういう、無言の背中から学ぶという世界は嫌いではないが、根性は必要になる。
何れにせよ、人間も人間以外の生物も、本当に怒らせると怖いのは女性、ではないかと思う。
"The Lost World : Jurassic Park II" Steven Spielberg |
そんな空気を読んでも、賃金はちっとも変わらないんだけどね。