数時間くらい寝ると、自然に目が覚める。
別に苦ではなく、起きるとトイレに行ったり一服したりして適当に30分くらいを過ごす。
また寝る、を繰り返す。
夜働いて、昼寝ている。
そして、起きるタイミングが夕方頃になる時がある。
自宅前は幹線道路への抜け道になっているが、その時間帯にあるバイクが通過する。
このバイクを運転しているのは男性で、恐らく50cc程度のスクーターだと思う。
一度も見たことはないが、バイクの主が男性だと書くのには理由がある。
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Civilian - "Civilian" Wye Oak |
どんな騒音の中でも寝ることができる、というのが自慢なので、そのバイクを煩いとは感じない。
ただ、田舎の日射しは強烈だから、寝るときは流石に雨戸かカーテンを閉める。
起きて一服する場所は台所の換気扇前で、台所や廊下の窓は曇りガラスだ。
従って、見ようと思って窓を開けたり、玄関から出たりしないかぎり、外の様子は見えない。
来た来た、見えないけれど音で解る、今日も来たぞ。
ビイイイッという軽い排気音なので、50cc程度のスクーターというのは間違いないと思う。
そして、運転しているのは男性で、恐らく10代後半から20代くらい。
なんでそんなことが解るのかというと、いつも歌声が聞こえるからだ。
これがもう、発声練習かと思うくらいの声量で歌いながら、ビイイイッと走り去っていくのだ。
Longtime - "Trouble's Door" Ash Grunwald |
千葉で生活するようになって目下最大の謎は、そのバイクの主が「何を歌っているか」だ。
彼は運転中、季節や天候に関係なく、ずっと歌っているようなのだ。
遠くから来て、自宅前を通過、遠くへ去るまで、歌は途切れない。
いつも日本語の歌詞で、これは窓や雨戸を閉めていてもハッキリ聞き取ることが出来る。
しかし残念かな、彼は音痴なのだ。
無茶苦茶な音痴なのだ。
書き殴った文章、という言い回しに倣えば、まるで歌い殴るかのような音痴なのだ。
故に、日本語であることは明確なのに、歌詞やメロディーは判然としない。
もちろん、最初から最後まで聞いたことは一度もない。
元気で明るいメロディーなのは毎回同じだが、選ぶ曲は毎回違うようだ。
いつも、あれだけ人目を気にせずに突き抜けて歌える人って、どんな人なんだろう、と思いながら聴いている。
まるで探偵ナイトスクープの小枝探偵が依頼されそうな話だが、何を歌っているかは本当に謎だ。
X - "Lost Where I Belong" Andreya Triana |
もしかしたら、オリジナル・ソングなのかもしれない。