"我々はみんな虫けらさ。得体の知れない恐ろしいもの、あるいは神々しい何かを模索する虫けらなんだ。"
中間選挙が終わった。
言葉通り「中間」ではあるが、選挙人を介さない一般投票という点において興味深い。
特に今回は、投票日を休日にする会社や料金を値下げする交通機関もあったりして注目度が高かった。
2014年の中間選挙では投票率が35%前後だったというから、今回は40%以上は確実だと思う。
以下「ざっくり」で「約」を全て切り捨て、この40%で計算してみたい。
現在、アメリカの人口は3億人なので、40%とは1億2千万人のアメリカ人のことである。
地球の人口は75億人なので、1億2千万人のアメリカ人とは1.6%の地球人のことである。
アメリカで実際に投票資格を持つ人間はもっと少ないので、まあ1%の地球人としておこう(多分1%もないだろうけど)。
で、今回は接戦だったらしいので半々にする。
つまり、中間選挙で具体的に大統領を支持したのが0.5%の地球人、反対したのが0.5%の地球人である。
残りは、棄権したり、そもそも投票資格がなかったり、海の向こうの話で関係なかったりした99%の地球人である。
統計学の専門家に聞けば、それで何の問題もないと答えるに決まっているし、その通りのはずである。
まったくその通りのはずなんだが、ある小説を思い出した。
Himmler's speech at The Volkshalle - "The Man in the High Castle: Season 2" Daniel Percival, US 2016
ブレードランナー繋がりで 今や「サー」となったリドリー・スコット卿が製作総指揮を務める。 10人近い監督が持ち回りで各話を担当し、ドラマ化はやはり映像化が重要なポイントになるためか ゴールデンゲートを悠々とくぐる大和など、マニアが喜びそうなシーンも多い。 "The Man in the High Castle" series Amazon.com, Inc. |
小説「高い城の男」はアメリカのSF作家、フィリップ・K・ディックの代表作である。
1962年に発表され、SFというよりも、SF的手法を用いた本格的な歴史改変小説の先駆けとして名高い。
ヒューゴー賞作品であるし、近年はAmazonで実写ドラマ化もされているのでお時間があればお薦めしたい。
なお、小説とドラマではかなり違う部分があるが、これは他の作品と同様でご留意いただくしかない。
物語の骨子は同じ第二次大戦後で、枢軸国が勝利して連合国が敗北しているという、現実と逆転した世界が舞台である。
なお小説は戦記がメインではなく、戦後の世界で取引される美術品や骨董品の真贋、易学などが軸となる群像劇だ。
そして、超大国となったドイツと日本が東西を分割している世界で、ある禁書が人々の間で話題となる。
その禁書とは「イナゴ身重く横たわる」(The Grasshopper Lies Heavy)と呼ばれる小説で、作者不明であった。
この小説には「もし連合国が勝利して枢軸国が敗北していたら」という「架空の世界」が描かれていたのだ。
“Did you hear the Bob Hope show the other night?
He told this really funny joke, the one where this German major is interviewing some Martians.
The Martians can’t provide racial documentation about their grandparents being Aryan, you know.
So the German major reports back to Berlin that Mars is populated by Jews.”
「いつだったかの晩のボブ・ホープ・ショーを聞いた?
彼がすっごく面白いジョークを言ったのよ、あるドイツ人の少佐が火星人たちを取り調べてたんだって。
火星人たちは自分たちの祖父母がアーリア人だっていう証明書を提出できないの、当たり前よね。
だからドイツ人の少佐はベルリンに報告するわけ、火星にはユダヤ人が住んでおります、って。」
まだ暫くの間、99.5%の地球人は、0.5%の地球人に支持されたアメリカン・ファースト大統領と付き合うわけだ。